第14話<教室という名の司令塔>

「霧島さん、大丈夫だったのかよ」


 囁き声で隣の席の立花誠は神崎幸に話しかけた。僕は机に横になり、脱力しながら言った。


「あぁ順調だよ。あとは多分、最後の主犯格を浄化すれば終わる。てか、マコ、お前、現状理解するのが早すぎるだろ」


 僕はもっとこの隠された事実に驚かれると思っていた。しかし、マコはすんなりと受け入れた。


「そんなことねぇよ。親友のお前が言うことだから、信じたんだよ。でも、まさか電視に鬼、エレキが住んでいるとはね。でも、ヤミキだっけ?そいつを倒せば、本当に霧島さんの非表示が解除されるのか?」


「多分な。でもあんまり、大きい声で言うな。誰かに聞かれたらどうするんだ。パニックが起こる。それに大きなヤミキ、言語能力を持っていたヤミキが「あの方」と言っていたのも気になる」


 マコには霧島さんが非表示になってすぐに連絡し、解除方法を調べてもらっていた。しかし、収穫はないと言う。だから、はっきりとした事はまだ分からない。


 マコは、


「ごめん、ごめん」


 と小さく舌を出し、手で謝罪を伝えた。



 (しかし、浄化の影響がこのような形で現れるなんて)


 浄化後のヤミキの宿主が流した涙は、謝罪の涙か、それとも機械的な条件反射だったのかは定かではない。それに、ヤミキの弱点に埋まっていた宝石のようなものはなんなんだろうか。あれを壊した途端に浄化されたのだから、あれがヤミキの弱点、核に間違いない。あの核は自然と生成されたものなのだろうか。


 疑問は募るばかりだ。


「引き続き、作戦を行う。マコ、先生にバレないようにカバーしてくれよ」


「はいよ。でもよぉ、霧島さんに俺の事を紹介しなくていいのか?」


「構わないよ」


「さては、サッチ―この状況を楽しんでいるだろ」


 彼が脇腹をくすぐってきた。


「何の話だよ!」


 僕は笑いを堪えながら、彼の手をはらった。


「この状況つまり霧島さんを助けようとしているのも、見えているのもサッチー一人だけって状況を楽しんでいるんだろうって話だよ。だから、俺の存在は言わないんだろ、違うか。このむっつりめ」


 彼は意地悪く、目を細めて言った。


「なんだよ、むっつりって」


 誠はシッシッシと歯を見せて笑った。


「おいそこ!静かにしろ!授業中だぞ!」


 先生に注意を受けた。


「おっとやべ!」


 二人して教科書を慌てて見るふりをし、顔を見合わせて笑った。彼は良い親友だ。


(しかし、彼女の存在が限りなく無くなりつつあるのに、マコは認識できるのはなぜだろう。僕が話をしているから、彼の中での彼女の存在が強く残っているからとも考えられるが……)


 疑問は募るばかりだ。

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