第137話
「リンデール、これをどう思う?」
「はい、これは――、戦争の概念が変わるものかと……」
「――で、あるな……。アルス、この情報は、私たち以外には知らせたことがあるか?」」
厳しい視線で俺を見ながらアルセス辺境伯は俺に問いかけてきた。
俺は彼の言葉に頭を左右に振る。
「本来であれば、僕もこのような兵器を使う予定はありませんでした。ですが、念には念を入れて――、と考えてしまうと、どうしても必要という選択肢になるのです」
「ふむ……。リンデール」
「はっ!」
「この図面通りに投石器を作ることは可能か?」
「可能だと思いますが――、ですが……」
「分かっておる。これだけの危険な技術を流出させるわけにはいかん。すぐに信用のおける者だけを集めて建造に着手してくれ」
「わかりました」
どうやら、アルセス辺境伯は、投石器の危険性をよく理解した上で対応をしてくれるようだ。
少しだけ安心しつつ、戦争の手段として使われるかも知れない投石器に関して少しだけ考えることがあったが、とにかく時間がない。
「アルセス辺境伯様、魔法師団としては魔王城の位置を特定しておきたいのですが?」
「アルス。魔王城が報告のあった場所に存在しないという話は聞いていたな? すぐに案内できるか?」
「はい。可能です」
アリサの要望を受けるようにして、俺はアルセス辺境伯の命令でアリサに付いていくことになった。
――アルセス辺境伯軍。
その中でアリサが魔法師団長を務めている魔法師団。
現在、俺は30人もの魔法師と一緒に魔王城へ向かって山の中を登っていた。
アルセス辺境伯軍の拠点としている場所から20分ほど山の中を歩くと、目の前の光景が一気に開ける。
「――これは、隠蔽魔法? なんて強い魔力――」
アリサが一人呟きながら俺を見てくる。
その瞳には、戸惑いの色が浮かんでいるようにも思えた。
俺は彼女の視線を無視して歩き出す。
すぐに魔法師団も追ってくる。
「ここが、魔王城の城門だと思いますが――」
魔法師団が到着したのは、俺が城門前で立ち止まってから数十秒後。
彼らは神妙そうな面持ちで扉に書かれている文字を読んでいた。
俺以外の全員の魔法師が門に書かれている文字を読んでいたことで暇を持て余した俺は、近くの木に寄りかかる。
するとアリサが近づいてきた。
「アルス君」
「――何でしょうか?」
俺は、あくまでも素っ気なく答える。
「ここって、中には入れないの?」
アリサが、またトンでもないことを言い出した。
入れるか入れないかで言えば、俺は入れるのだが――。
それを彼女に言っていいのか躊躇ってしまう。
「わかりません、試したことがないので――」
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