第47話
――アルセス辺境伯軍の陣地の中を、アルセス辺境伯を先頭にアリサとアドリアンが進んでいく。
「それで、話と言うのは?」
「ここでは、アレだからな。まずは天幕に行くとしよう」
アドリアンの問いかけに、アルセス辺境伯が答える。
そのあとは無言で3人とも歩き続け、兵士達が設営したばかりの天幕に入ると、地面の上に敷かれていた絨毯の上に上がりアルセス辺境伯に勧められて設置されていた椅子に腰掛けた。
軍事目的のこともあり、大きな木製のテーブルが置かれており、その周辺には8脚の椅子が置かれている。
そのうち3脚にアルセス辺境伯、アドリアン、アリサが座った格好となる。
「さて、まずは……シューバッハ騎士爵領に来た目的は、先ほども話したとおり魔王を討伐、もしくは手に負えなかったときに王国軍が軍備を整えるまでの時間稼ぎのためだ」
「魔王ですか?」
アリサが、中央に置かれているテーブルに両手を突きながら立ち上がり、アルセス辺境伯へ視線を向ける。
「魔王と言えば常識では考えられないほどの強大な魔法を操る魔族……そんなのがいると?」
「そうだ。王宮の先読み姫が、そのように神託を下されたのだ。これが、王宮から届いた書簡だ。ライガット陛下も目を通されている正式なものだ」
テーブルの上に置かれた書簡に目を通していくアリサの顔色が変わっていく。
「魔王カダード……そんな、化け物が――」
「アリサ殿、魔王がいるとは、先ほど伺いましたが、そんなに危険な存在なのですか?」
「はい、間違いなく歴代最強の魔王です。あらゆる魔法が効かず、女神や神、勇者ですら倒すことが出来ず命をかけて封印するのが精一杯の正真正銘の化け物です。それで、勇者は?」
「勇者召還は失敗したと。どうやら、すでに召還されていると――」
「すでに召還されている?」
アリサの質問に、アルセス辺境伯は神妙な表情で答えていた。
「ですが……、気になる点があります。先読みの姫からの報告ですと魔王が復活するのは5日前だったのでは? どうして、魔王が出てこないのでしょうか? 反応がないのでしょうか?」
アドリアンの言葉に、アリサが「たしかに……魔王は生きとし生ける者を滅ぼす者。何故――」と呟いている。
そんな二人を見ていたアルセス辺境伯は口を開く。
「これは私の推測だが、魔王は1000年以上封印されていたことで、ほぼ魔法が使えない状態なのではないのかと……」
アルセス辺境伯の憶測を聞いたアリサは、「魔法が使えない状態?」と言う言葉にハッとした表情でアルセス辺境伯を見ると、アルセス辺境伯は頷く。
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