第39話
おかしいな。
もしかして、アリサは、かなりすごい魔法師なのか?
それよりも魔法を覚えた時期から年齢を推測しようとしたのだが、無理そうだな。
「あ……。アルス、昨日は魔法が発動しなかったことは気にしたらダメよ? 誰でも得意な魔法と、そうでは無い魔法があるもの」
「そうなのですか? 使えない魔法も存在するのですか?」
「使えないというか苦手な感じかな?」
「そうなのですか……」
ちょっと自分自身の魔法の才能に自信が無くなってきたぞ?
本当に俺、魔法使えるのか?
俺が考えこんでいるとアリサが、なにもない空間から長さ80センチくらいの木の棒を取り出すと俺に差し出してきた。
「先生、これは?」
「それは魔法の杖よ。魔力を増幅してくれるの」
「そうなんですか?」
差し出された杖を手に持ってみるが力が沸いてきたり、魔法が閃いたりするようなイベントが起きることはない。
「その杖は魔力を増幅してくれるの。ちなみに、その杖の原材料は、魔枝と言うのよ? ダンジョンから産出されるから結構珍しいんだから。 一応、アルセス辺境伯爵様からの心遣いだから、大事に使ってね」
「わかりました」
辺境伯からのプレゼントか……。
まぁ、父親が俺くらいの魔法師としての才能があるのは一万人に一人くらいと言っていたからな。
アリサ先生の魔法を見るだけで分かる。
それが軍事的に、どれだけ強い力を持っているか――。
一度、魔法師が戦場に投下されれば、その圧倒的な力で英雄とか賢者とか勇者とか呼ばれてしまうのだろう……。
――あっ……。
そこまで考えてようやく理解する。
魔法師は恐れられているということを。
そのことをアリサが何度も言っていた。
そう、強い力というのは尊敬と共に畏怖と恐怖を生み出す。
その魔法師の道に俺も踏み出そうとしている。
まぁ正直、ボッチで引きこもりだったアルスには、誰かに恐れられたり畏怖されたり恐怖されるような知り合いはいないから問題ない。
そして、俺だって大して他人を気にしないで過ごせる。
他人に対して無関心な東京で暮らしてきた実績があるからな。
「それじゃ、魔法の練習を始めましょう。まずは杖を構えて――」
「はい」
俺はアリサの言うとおり、杖を川のほうへと向ける。
「簡単な魔法からいくからね。一番、簡単な魔法アイスアローからね」
アリサの言葉に俺は頷く。
アイスアロー、日本語では氷の矢と言ったところだろう。
何度も漫画やアニメで、そういう場面を見たことがある。
「まずは詠唱ね」
「さっき、詠唱は必要ないって――」
「ま・ず・は! え・い・し・ょ・う・ね!!」
「――あっ、はい……」
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