第19話
「アルス、私も貴方の決意を忘れないわ。そうね……、修行は明日からでいいかしら? さすがに、こんな気持ちのまま、貴方に魔法を教えることなんて出来ないわ」
「分かりました。僕は、アリサのことを待っていますから!」
俺の言葉にアリサ先生は、雪解けの中に咲く花のように綺麗に笑う。
そのアリサ先生の表情は、とても魅力的だった。
俺が、子供や生徒でなかったら一発で恋に落ちてしまうほどの破壊力!
彼女は、俺の額に接吻してくると「これは誓いだからね。絶対に約束を違えたらダメよ?」と語りかけてきた。
そのあと、俺とアリサ先生は、川べりに二人で座って時間を費やしていた。
すぐに家に戻ると両親に不審がられるかも知れないから。
たまには魅力的な女性と二人で時間経過を楽しむのも悪くはない。
ただ、少し気になった点がある。
それは――、アリサ先生が後ろから俺に抱きついて膝の上に乗せたまま嬉しそうに歌を歌っていたということだ。
まぁ、彼女のやる気が上がったのなら、歓迎することなのだろう。
それに、明日から魔法も教えてもらえることになったからな。
全ては俺の作戦どおり!
話は、上手く転がってくれたと見て間違いないだろう。
「ねえ? アルス」
「はい?」
「私ね。やっぱり貴方の両親に、きちんと許可を取ってきたいの」
「許可ですか?」
俺は、何の許可だろうと考える。
そして、すぐに答えは出た。
つまり、俺に魔法を教えることになったということを両親に説明するつもりだろう。
――なるほど。
アリサ先生は、最初から魔法を教えるかどうかは生徒を見てから決める予定だったと言う事か……。
そして、俺は、その試験に合格したと……。
魔法が使えるものは、嫌われ者として見られる可能性もある。
それを乗り越えられるか否かを見たかったというわけだな。
「ええ、貴方と私の将来に関わってくる大事な話だもの。それに、そういうのは貴方の口からより私が直接言ったほうがいいと思うから……」
「たしかに……」
アリサ先生の意見には大いに賛同できる。
いくら人生経験豊富な俺が、両親に魔法を教えてもらえるようになったと説明しても、両親が見ているのは5歳の子供なのだ。
子供の意見というのは、なかなか親には伝わりにくい。
なら、大人であり魔法の先生ともなるアリサ先生から直接、両親に伝えてもらったほうがいい。
そして、もし聞かれたら口裏を合わせればいいだけだろう。
ふむ……。
「わかりました! 僕とアリサ先生の将来とか今後のことを考えると、下手に両親に隠し事をするよりかは、きちんと説明をして許可を取ったほうがいいですよね!」
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