メグの夏休み
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プロローグ
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メグは退屈していた。
そう、今は夏休み、「フツウ」の小学生だったら、プールに行ったりそこらへんで遊んだり、忙しい時期だ。
しかし、メグは何もしない。ただぼんやりと机の上にノートを開いて、その白紙を眺めるばかりだった。
メグは今、一人だった。
両親は外出中。きょうだいはいない。
かと言って、これといった友達もいない。いや、いると思っていたが、どうやら勘違いだったようだ。夏休みが始まって1週間も経ったのに、誰からの誘いの電話もない。
(みんな私のこと好きじゃなかったんだな。いいや。私もみんなのこと好きじゃなかったし)
自分から電話をする気も勇気も無いメグはそんなことを自分に言い聞かせながら、とにかくただノートを開いて、鉛筆を弄んだ。
メグは今、「マンガ」を描いている。
メグは元々、絵を描くことが好きだった。それで、周りの友達の影響もあって、自然に漫画を描いてみようという気になったのだった。
今書いている「マンガ」は、異世界ファンタジーの冒険もので、最初は勢いよく描き始めたものの、最近はずっと描き進められていなかった。鉛筆が自然に止まってしまうのだ。しかし、メグにはもうこれしかやることが残っていない。もちろん、宿題は別だが。
(本当にやさしい人って、どこにいるんだろう)
メグはいきなりそんなことを思いながら、ノートと睨めっこをしていた。
メグは最近、本人はそう気づいてなかったが、ノートと共に至極哲学的なことを考えるようになってきていた。そして、メグの思う、その問いの答えは「マンガ」の中にこそあった。
(自分で作り出すキャラクターは、絶対だ。優しく無いはずがない。それにしても、暇だ。うだるような暑さに、この暇さ)
そのとき、メグはあることを思いついた。外はさらなる暑さだが、ここにいるよりはマシかもしれない。もうこの暇さには耐えられない、と言わんばかりに、メグはベージュのリュックを背負うと外へ飛び出した。
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