第35話【約一ヶ月後の朝】

「それでは私は先に行きますね。

透くんも遅れないようにしてくださいよ」


「はいよ〜」


リビングから玄関に向かいながら俺に声をかけてくる一姫に俺は手をヒラヒラとさせながら答える。


一姫と母さんが役所に出かけた日から約一ヶ月ほどが過ぎた。

つい先日一姫が無事に双葉家の一員になることが確定し、前から言っていたように俺の家で二人で住むことになった。

母さんには「あんた一姫ちゃんに手を出したら承知しないからね!」と散々言われたけどね。

父さんと一姫は時間の都合上、顔を合わせた程度でほとんど話せていないのでまた近いうちにゆっくり会える日を作る予定だ。

そして今日からやっと一姫が普通に学校に通えるようになる。

俺と一姫が家族になった事は俺と一姫で話し合い秘密にする方向で決まったので行きも帰りもバラバラの時間で行くことになった。


「はぁ〜あ。

俺も準備しますかね〜」


俺はそう呟き自分の部屋からスクールバッグを持ってきてダイニングの上の一姫が作ってくれた弁当を入れ家を出た。


◇◆◇


「おはよう。

ごめん、待たせた?」


「うーす」


「おっそいよ!

透くん!

私達がどれだけ待ったことか!

そんなんじゃ彼女出来ないよ!」


「ごら真紀、嘘を言ったらダメでしょ?

私達も五分前に来たばっかりじゃない」


この約一ヶ月で変わった事は一姫が俺の家族の一員になった事だけでは無い。

かおりちゃんがイメチェンして学校に来てから俺、誠司、かおりちゃん、そしてかおりちゃんの親友の立花 真紀と四人で学校から帰る事が多くなった。

そして、帰りだけでは無く行きもばったり出くわして一緒に行くことが何度があったため、「もういっそのこと待ち合わせして一緒に行くか」という誠司の言葉で待ち合わせして学校に行くことになった。


「いや、五分でも待たせたことに変わりは無いからね。

ごめんね」


少しでも待たせてしまったのは事実なので素直に謝ることにした。


「わかればいいのよ」


真紀は元気でお転婆な性格で引っ込み思案なかおりちゃんの事を引っ張っていると言う印象だ。


「はぁ、本当に真紀ったら・・・。

あ、透くん、おはよう」


「うん、おはよう」


「お〜い、お二人さんイチャイチャしてないでさっさと行きましょうや」


俺達の会話を聞いていた誠司がやれやれと肩をすくめながら言う。


「何言ってんだよ。

まぁ、遅れるの困るから二人とも行こうか」


俺は誠司の言葉を軽く交わしながら女の子二人に声をかける。


「は〜い」


「う、うん」


かおりちゃんは顔を赤くしているがここで何かを言うと誠司と真紀にいじられるのが目に見えていたのでそのまま学校へ向かって歩いていった。

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