第23話【母と俺達4】

「うん。

何となく母さんが一姫を引き取りたがってる理由はわかった。

だけどそんなに簡単に決めていいのか?父さんに相談してないし」


『ああ、それなら大丈夫。

さっきも言ったけどお父さんも私と一緒で本当は他に子供が欲しかったのよ。それにお父さんの性格からして一姫ちゃんのこと話したら泣きながら賛同してくれるはずよ』


「まあ、それもそうだな」


父さんは“基本的に”情に厚い人なので一姫のような人は出来れば助けてやりたいと考えるはずだ。

あくまでも“基本的に”なので自業自得の時や自分の大切なものに被害がでる確率が高い時はあまり肩入れすることは無いしいざという時はバッサリ切り捨てる。


「じゃあ、あとは一姫次第って感じだな」


『そうね。

一姫ちゃんはどうしたい?

ごめんね。

こんな大事なことすぐになんて決められないわよね。

でも、時間をかければかけるほど一姫ちゃんの考えはドツボにハマっていくと思うし状況も悪くなっていくの』


この相手に全くペースを掴ませない感じに俺はまるで詐欺の現場でも見ているような気持ちになってくる。


『透。

今変なこと考えなかった?』


「えっ?」


何故バレたし!

エスパーかよ!


『はぁ、まあいいわ』


「あ、あの!」


『ん?

どうしたの?』


一姫は少し俯きながら話し始める。


「本当にいいんでしょうか?

透くんのお母様のお話を聞いて自分の置かれている状況を正確に把握出来ました。その上で今のお話は私のことをよく考えてしてくださり私にとってはこれ以上に無い話だと思います。

しかし、私はこの話を受けていいのかがわかりません。

お金や手間、責任と多くの本来抱えなくていい問題を背負わせてしまいます」


『んー。

やっぱり色々考えちゃうよね〜。

でもね。

お金とか責任とかは大人が考えることで子供はどうしたいかだけでいいの。

未成年って言葉の意味は簡単に言えば子供を大人が守ってあげましょうってことでしょ?多分』


最後に多分てつける当たりどうかとは思ったが母さんらしい考え方だなぁ〜と少し顔を綻ばせる。


『まぁ、困ってる子供は全員助けたい!なんて大層な事は考えてないし出来ないこともわかってる。でも、目の前にいる一人の子供を救いたいって思うぐらいはいいじゃない。

これが私の自己満足だってことはわかってる。けど、ここで何もしないで後悔はしたくないのよ。

ねぇ、聞かせて一姫ちゃん。

私の家族になるのは嫌?』


母さんがどんどんと声のトーンを落とし語りかけるように、囁くように一姫に言葉を告げる。


「そ、そんなことはありません!

お母様のお考えはとても素晴らしいと思います!

私なんかでよろしいのであればよろしくお願いします!」


一姫は上手いこと母さんの手のひらの上で転がされ勢いで了承した。


『よっし!

言質取ったわよ!』


「へっ?」


『一姫ちゃん、早速明日から話を聞きに行ったり手続きしたりしに行くから学校休んで家で待っててね!』


「あ、あの!」


一姫は一度母さんの話を止めようと言葉を放つが聞いていないのかそれも聞こえてないふりをしているのか全く止まる気配は無い。


『あ!そうそう、一姫ちゃんの知り合いの弁護士にも話をしないとね。この電話が終わったら透から私のメアド聞いて出来るだけ早くその弁護士の連絡先を送って来てね!

じゃ、私明日に備えて色々準備するから切るわね。また明日!』


畳み掛けるかのように早口で要件だけ言い電話を切られた。


「·····ほへ〜」


母さんの瞬時に変わったテンションとマシンガントークに一姫は普段なら絶対に出さない声を出し目をぱちぱちさせて困惑している。

正直めっちゃ可愛いです、はい。


────────────────

大変お待たせしました!

あまり納得ができず書いては消してを繰り返してました。

申し訳ないです。


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