第23話 迂闊




 ギリッと背中にめり込むように、冷たく硬いものを突き付けられた。

「獲物はおまえだよ」

『……取引場所はあのホテルの部屋。向こうが片手を上げたら、ついていけばいい』という指示を鵜呑みにしていた。一瞬でも標的に背を向けるなんて、致命的な失態。


 鏡の中でウィッグをかずした標的は、見るからに自分よりも年若い男。その真っ赤な唇と舌が耳元に、ギラついた爪が首筋へ伸びる。


「男と抱き合う趣味はない? まァそう言わずに、どうせなら楽しもうぜ」






★「ハードボイルド」というお題を頂き、SS名刺に収まるだけの文字数で書いてみたSSです。SS名刺とは、SS名刺メーカーという素晴らしいツールを使って短い文章をイラストや写真と組み合わせ、名刺型のレイアウトで画像化したものです。

 この「お題を頂いてSSを書く」に至った経緯は18話のココのスペースに詳細がありますが、ざっくり申し上げますと、他サイトで行われたクイズイベントで自作を当ててくれた読者様、書き手様への御礼として書いたものです。あと2編続きます。

 エブリスタの自作ページでは画像を載せています。よかったらご覧ください。



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