第52話 三角関係
次の患者は和田康子、二十一歳、学生である。吾郎はいつものように、
渋沢吾郎:どうしましたか。
というと康子は険しい表情で、
和田康子:なんか体の調子が変なんです。体も元気ないし、全身がだるいんです。検査ではどこも悪くないといわれましした。そして、いい病院があるからここを紹介してもらいました。
渋沢吾郎:なるほど、調子が悪いときは休むにこしたことはないんですが、休んでも体調が悪いんですか。
和田康子:はい、一週間ほど休みましたがぜんぜん回復しません。
渋沢吾郎:休んでる間は何か考え事をしていましたか。
和田康子:してました。
渋沢吾郎:それでは休んだ事になりませんね。
和田康子:そうですか。
渋沢吾郎:おそらく和田さんは何か悩みを持っているのではないですか。
和田康子:はい。でも・・・・・・。
渋沢吾郎:しゃべりずらそうですね。でも薬では治らない事もあるんです。原因はたいてい実生活から生まれるものなんですよ。それを言ってほしいのですが、どうしてもダメなら心の準備ができてからでもいいですので。
康子はちょっと考えて、
和田康子:ちょっと待ってください。準備はできています。
渋沢吾郎:ではどうぞ。
和田康子:はい。・・・・・・実は私には好きな人がいまして、私の友達の好きな人と同じなんですよ。
渋沢吾郎:三角関係って所ですね。彼はどんな人なんですか。
和田康子:明るくて、誠実で、面白い人なんですけど・・・・・・。
渋沢吾郎:そうですか。しかし本当に誠実なんですか。悪い言い方をすれば二股かけているということですよ。
和田康子:それが違うんです。その人は女性に何かを求めているらしくて、私も他の誰にも手をつけていないんです。この人はすぐツーショットになりやすいんですが、話を聞くと、将来の夢を話すんです。それでなんか友達も好きになったみたいでどうしたらいいんですか。その友達もいい人だし、彼もいい人だから。
渋沢吾郎:その彼氏は君たちに告白しましたか。
和田康子:いいえ。してません。私たちの気持ちは伝えたんですが。
渋沢吾郎:もしかして君たちの他に、誰かいるんじゃないんですか。
和田康子:いえ、電話は毎日かかってくるし、私の友達にもかかってきます。三人でいる時間も多いいし、なんかこのまま行ったらどうなるのかわからなくなってくるんです。
渋沢吾郎:何か彼に見られている気がしますね。
和田康子:見られている?それはどういうことなんですか。
渋沢吾郎:彼は姿・形だけじゃなく瞳の奥まで見ようとしている気がします。
和田康子:私たちじゃ不満だという事ですか。
渋沢吾郎:いえ、少なくとも和田さんに電話がいっているといことから不満という事はないと思います。私も彼のようになって見たいと思いますが、彼は自分の洞察力で彼女を決めようとする気がしますが、あなたたちは彼に見られているということは、おそらく和田さんに気があると解釈していいと思います。それが一つ目。二つ目は、彼は女性に対して何かを求めているような気がします。だから付かず離れずの状態をとって何か確かめている気はしますけどね。まあ、私の考えがあっているとは限らないですが。
和田康子:なんか先生の話を聞いたら彼が怖くなっちゃった。
渋沢吾郎:思い切って彼が何を求めているのか聞いてみたらどうですか。
和田康子:そうします。ありがとうございます。
渋沢吾郎:では薬はいらないですね。
和田康子:はい。
その後、康子は彼に会って近くの公園のところまで行って彼に告げた。
和田康子:ねえ、今井君。今井君には何か女性に求めているところがある。
今井:求めているところ?
和田康子:そう。
今井:男はセックスに決まっているじゃん。
和田康子:普通の男じゃなくて今井君はどうなの?
今井:そうだね。聞かれるまで答えないようにしていたから何も言わなかったけど言われたから答える。そう。何があっても壊れない絆を持った二人でいて、一緒に生活して生きていける人がほしいんだ。だからいろんな人の瞳を見てた。だけどそういう瞳を持った人に会わなかった。そしてやっと見つけたと思ったのが君と君の友達。
和田康子:今の時代にそんな事まで決めている人はそんなにいないよ。
今井:だけど自分たちが幸せになるには必要なことだよ。
和田康子:そうだったのね。じゃあ友達より先に私が聞いたから私と付き合ってくれる。
今井:いいとも。だけど洋子はどうしようか。
洋子は、康子の友達である。
和田康子:今井君が言って。
今井:君じゃダメなの。
和田康子:私だといやみっぽくなるから。
今井:しょうがない。わかった。
二人は誰もいない静かな公園のベンチに座り、そこでキスをした。その後日、今井は洋子に電話した。
今井:洋子、ごめん。いつかはこういう時がくると思っていたんだけど康子と付き合うことにしたよ。
洋子:え。何で急に。
今井:康子が俺が話したかった事を聞いてきたから。
洋子:え。それで康子はなんて言ったの。
今井:康子が、『今井君には女性に何か求めているところがある?』と言われてね。
洋子:その事なら私も感じていたよ。今井君が何か女性に求めていたこと。答えはいつも一緒にいて、笑ったり、語ったり、どんなになっても永遠に一緒にいてくれる事でしょ。しかも優しい子。
今井君は青ざめた。自分が言おうとしたことを喋られたからである事と、さらに自分の考えている事が読まれていた事である。今井君は洋子と付き合いたくなった。同じ考えをもっていたからである。今井君は、思慮深く、自分をわかってくれて、最後まで信じてくれる人が欲しかったのである。今井君は大いに困った。今井君が悩んで言った。
今井:すまん。迷いに迷ったけど、また三角関係になってもいいかい。
洋子:しょうがないわね。もう少しで康子に取られるところだった。
今井:康子になんて言うか。
洋子:前言撤回するしかないね。
今井:そうか。・・・・・・わかった。
その後、今井君は康子に洋子との会話の事を電話で話した。康子はがっかりした。その理由は自分より洋子の方が今井君のことを知っていたからである。康子の答えは、
和田康子:もう疲れたよ。洋子のように自分の事がわかってくれる人がいてよかったね。それに、洋子は器も大きいし、私じゃとてもかなわない。だから洋子を大事にしてよ。私は身を引くから。
今井:すまない。
と、結局康子は今井君から離れて一つの恋が終わった。康子はその話を吾郎のところへ言って話した。
渋沢吾郎:それは残念でしたね。相手のほうが一枚上手でしたからねえ。それにしてもなんで彼にへばりつかなかったのですか。
和田康子:疲れたからです。
渋沢吾郎:そうですか。しかし、君はここでしおれてはいけません。また新たな恋を見つけてはどうですか。
和田康子:そう簡単に見つかりますか。
渋沢吾郎:私は副業として企画営業もやっているんですよ。それで、その内容は友達や恋人を見つけやすいように集まる場を作っているんですよ。まあ、パーティーみたいなものをやろうというわけです。
和田康子:そんなパーティーがあるんですか。
渋沢吾郎:そうです。資料を見ますか。
和田康子:はい、見ます。
資料の内容は、顔、形、生年月日、年収など、細かい性格を分析されたものまであった。吾郎は満足そうに見ていた康子を見て少しほっとした。康子は、
和田康子:ぜひ参加させていただけませんか。
渋沢吾郎:いいですよ。
と答えた。そして、康子にとって六回目のパーティーの時に彼氏ができた。
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