第26話 差別
今日の患者は速水洋介である。
渋沢吾郎:今日はどうですか?
速水洋介:私はいくら頑張っても世間には認められません。精神病とレッテルを張られているからだと思います。しかし、僕は自分には能力があると思っています。精神病だからできないという一般概念をぶち壊したいのです。精神病でも、これだけのことができると世間に言いたいのです。しかし、私は小説を書いているのですが、盗む者がいます。そのものは知名度が高いため、僕の書いた小説として認められないのが悔しくてたまりません。その者は僕のアイデアばかり狙っています。その者が発展しているのはほとんど僕の考えを盗んでいるからです。正直許せません。さらに僕の命も狙っています。僕が死んだら誰が作品を書くのでしょうか。
渋沢吾郎:まあ、熱くならず、冷静に考えて見ましょう。正直私からの目から見たところでは、あなたの病のせいは単純なものと見ています。そのきっかけさえあれば、治るものだと思います。でも、問題は、治っても、レッテルを貼られているところですよね。仕事もアルバイトですけどきちんとやっていることは私は認めています。しかし、世の中は矛盾だらけで、正直者が馬鹿を見る時代なのかもしれません。私も、そんな社会をぶち壊したいです。精神病というレッテルは人権に反しています。また、個人の能力の否定につながります。
世の中は本当に不条理だと思います。自分が頑張っている分誰かがおいしい汁を吸っているこれほど頭に来ることはありません。もしあなたが作品を盗まれているという証拠をつかんだら私が真っ先に戦いを挑んであげます。私は真面目に生きて病気ではないのに病気にさせられて、それでも真面目に生きているあなたがかわいそうでしょうがないのです。何とかしてあげたいのです。あなたは今、生命力がない状態です。霊にもとりつかれます。事実と違ったあなたにとって不利になる言動も出てくるでしょう。あなたはいろんなものをしょっている。あなたには力がある。だから、私は頑張るあなたにできるだけのことをしてあげたいのです。どうでしょうか。
速水洋介:ありがたい言葉です。しかし、僕には運がないような感じになっているようです。
渋沢吾郎:しかし、真実を知っている人は必ずいます。あなたが報われる日もいつかおとづれるはずです。まずは、あきらめないように、と、行っておきましょう。
速水洋介:これほど力強い言葉をくれた先生はあなたが初めてです。ありがとうございます。
渋沢吾郎:では頑張ってくださいね。
と、診察は終わった。
とその夜、吾郎は清子といつものように話をした。
渋沢吾郎:しかし、本当にこの世の中差別があるよな。人間の可能性を否定しているとしか思えない。
渋沢清子:あなたの患者の事?
渋沢吾郎:そう。正直言って、精神的な病になる人っているのは、頭がいい人が多いんだよね。ただ、運が悪いだけなんだよね。
渋沢清子:でも、ある意味平等よね。頭がいい人には、そういう試練が与えられるから。
渋沢吾郎:そんなこと言っても、病に苦しんでいる人たちは、本当に辛いんだよね。解かってあげるだけではなく、道も開いてあげたい。
渋沢清子:あなたって、優しいよね。
渋沢吾郎:でも、そういう人たちを誰かが救ってあげなきゃと思う。
渋沢清子:でも、良くここまであなたはたどり着いたよね。
渋沢吾郎:清子のおかげだよ。
渋沢清子:私もあなたのおかげで今日、生きているからお互い様だね。
渋沢吾郎:今日も、お互い気持ちいい夜をすごそうな。
渋沢清子:そうよね。これだけはお互い飽きないよね。
渋沢吾郎:まあ、そうだね。
と、お互いは今日の夜も楽しく過ごした。
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