第24話 鬱その6(恋愛関係:前編)

 次の患者は倉沢次郎18歳である。

渋沢吾郎:今日はどうしました?

倉沢次郎:正直鬱です。失恋の連続です。

渋沢吾郎:今、学生ですか。

倉沢次郎:はい。僕は焦っていました。支えが欲しかったんです。誰か彼女になって欲しかったんです。でも、結局誰も彼女にはならなくて、調子を崩してしまいました。

渋沢吾郎:話しを聞いていますと、誰か彼女になって欲しいということは、みんな知り合いだったんですか?

倉沢次郎:はい。高校からの知り合いでした。しかし、恋愛で人間関係がこじれて、しかも、誰も自分のそばにいなく衝動が抑えられません。

渋沢吾郎;そうですか。でも、あなたは誰でもよかったんですか?

倉沢次郎:そうでもないです。純真な人が好みでした。ただ、その頃は、僕の洞察力が欠けていました。みんなに嫌われたようでした。

渋沢吾郎:一人も成功しなかったのは残念でしたね。

倉沢次郎:ええ。それが原因で、鬱になっているようです。

渋沢吾郎:そうですか。あなたにとっては、彼女が支えなのですか?

倉沢次郎:はい。

渋沢吾郎:そうですよね。若いですからね。しかし、本命はいなかったんですか?

倉沢次郎:もちろんいましたけど、完全に嫌われていました。

渋沢吾郎:それはあなたが、いろんな人に声をかけたのが原因ではなかったのですか?

倉沢次郎:そういわれるとそうですね。でも、誰かにそばにいて欲しかった。そして、みんなと大人の付き合いをしたかった。

渋沢吾郎:なるほど、さっさと彼女を作ってから友達をどんどん作ろうと思ったわけですね。

倉沢次郎:はい。そうです。それに、人間関係も安定させたかったです。

渋沢吾郎:なるほど、で、彼女を作って人間関係を安定させて、いろんな人と交流しようと思ったわけですね。

倉沢次郎:はい。その通りです。

渋沢吾郎:では、なぜそうしようと思ったのですか?

倉沢次郎:人脈を作るためでした。しかし、彼女がいなくてすべて壊れました。

渋沢吾郎:そうですか。それで壊れているのですか。私が思いますに、もう一度、本命にアタックしてみたらどうですか。

倉沢次郎:でも、自信がないです。今の僕には鬱で、勉強ができなくなっています。

渋沢吾郎:そうですか。それなら、その人と縁をとって見ますか?

倉沢次郎:そんなことが可能なんですか?

渋沢吾郎:その人の携帯はわかりますか?

倉沢次郎:携帯まではわかりません。

渋沢吾郎:では、名前と住所はわかりますか?

倉沢次郎:そんなことしてどうするんですか?

渋沢吾郎:世の中広いもので、住所と名前がわかっていれば、携帯を教えてくれる人がいるんですよ。お金はかかりますが。

倉沢次郎:お金がかかるのなら、携帯は知らなくても、家にかけます。

渋沢吾郎:そうですか。健闘を祈っています。

 と、今日の倉沢次郎への診察は終わった。・・・つづく・・・

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