第20話 鬱その5
次の患者は八幡四郎23歳である。
渋沢吾郎:どうしました。
八幡四郎:やる気をなくしました。
渋沢吾郎:どういうことです。
八幡四郎:努力が認められないのです。
渋沢吾郎:なるほど。他には?
八幡四郎:僕の作品が盗まれているんです。
渋沢吾郎:それは辛いですね。でも、盗まれるということは、あなたの作品は凄いということですよ。
八幡四郎:しかし、悔しいです。盗まれるだけでなく人格も傷つけられています。僕の作品は僕の命そのものなのです。
渋沢吾郎:それなら自分の作品は自分にしかできないという証明をする必要がありますね。
八幡四郎:それならまず、自分の作品は相手よりもはるかに先に自分のホームページに載せている。相手には作品の続き作れない。どういうわけか自分が作品を書いたときだけ相手は書いている。もし裁判をしたら勝てますか?
渋沢吾郎:ホームページに相手よりはるかに先に載せているのであれば、問題はないのでは?
八幡四郎:しかし、相手は何でもできます。反則をいくらでもできます。レフリーと組んでいるのと同じです。正直汚いです。
渋沢吾郎:なんとか手を打ちたいところですね。
八幡四郎:手が打てないから欝なんです。やる気がおきません。
渋沢吾郎:そうですか。何の手がないのは私としても悔しいです。
八幡四郎:渋沢先生でも手がないのですか?
渋沢吾郎:とにかく相手が尻尾を出すまで我慢するしかないですね。あなたはホームページに作品をはるかに前に先に乗せている。いざ勝負となれば、勝てるのではありませんか。
八幡四郎:それでも反則ができるのが相手なんです。
渋沢吾郎:しかし、それは社会的には通らない話ですよ。普通は。
八幡四郎:それでも通すのが相手なのです。だから欝なんです。
渋沢吾郎:なるほど。しかし、チャンスは来ます。希望を捨てないで下さい。人生とは不思議なもので、自分が思っていいる方向に進むものなのです。天の道理をわきまえていれば、あなたにもチャンスが来ます。聞いていると、あなたの作品は未完成なのではありませんか?
八幡四郎:はい。少なくとも10年かかるものと、70年はかかるものがあります。
渋沢吾郎:そんな長編なんですか?
八幡四郎:まともに書けばそうなります。
渋沢吾郎:それでは作品が終わる頃には相手は生きていないのでは。
八幡四郎:そういうことになります。
渋沢吾郎:粘るしかないですね。
八幡四郎:しかし、人格が傷つけられていては作品も生かされません。
渋沢吾郎:人生は長いですよ。チャンスは必ず来ます。それを信じてください。私にはそれしか言えません。
八幡四郎:そうですか・・・・・・。
渋沢吾郎:何のアドバイスもあげられなくてすいません。いいアドバイスが思いついたら後日に教えましょう。
八幡四郎:理解していただけでも幸いです。自分の周りの人には全く解ってもらえなかったので。今日はありがとうございました。
と、八幡四郎は暗い状態で帰って行った。
吾郎は今日も夜清子と話した。
渋沢吾郎:今日の患者さんは世の中のシステムがわからない人と勘違いされる人だった。
渋沢清子:そうよね。自分の作品が盗まれているほど辛いものはなく、さらに相手は反則が使える。それが本当だったらかわいそうだわ。
渋沢吾郎:俺は本当と見たよ。裁判すれば、普通なら勝てる。しかし、相手はこの世のルールを曲げられる。これは正直ありえない。非常に難しい問題でもある。まずは人間社会というものは、個人の権利、この世の真実それらが守られなければならない。八幡さんはそれを無視されている社会で生きている。俺には考えられない。なんとか救ってあげたい。もし、俺に政治化とのかかわりがあれば、なんとかなるのかもしれないが、今の日本はこのままだと沈没してしまうよ。
渋沢清子:そうよね。誠実な人が認められない世の中はありえないよね。私は真実を守りたい。
渋沢吾郎:それに、宗教が絡むとろくなことがないなあ。
渋沢清子:八幡さんって宗教団体を敵に回しているの?
渋沢吾郎:そうなんだよ。宗教は本来個人が幸せになることが目的なのに、その宗教は逆だよ。
渋沢清子:みんなマインドコントロールされているんじゃないの?
渋沢吾郎:そうなんだよ。一度カリスマを作り出したらなかなか壊れないからね。
渋沢清子:なるほどね。しかし、人を不幸にして喜んでいるなんて最低だね。
渋沢吾郎:自分が正当に評価されない世の中ほど辛いものはないよ。
渋沢清子:そうよね。で、今日はこのくらいにしない?
渋沢吾郎:そうだね。世の中がいい方向になることを願いつつまずは俺らがしっかりしていないとな。じゃあ、寝るか。
渋沢清子:今日もよろしくね。
と、二人は今日も仲のいい夫婦であった。
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