カッコいい幼馴染は可愛い

@山氏

俺よりもイケメンな彼女

 ピピーっと隣のコートで笛が鳴る。すると、黄色い歓声が耳に入ってきた。

「伽耶せんぱーい!!」「カッコいー!」

 ふと声の方を見てしまう。女子に囲まれた中で、頭一つ分ほど身長の高い、短髪の女子が困った顔をしていた。

「翔也! あぶねえ!」

「うぇ? いでっ!!」

 声を掛けられ、振り向いた瞬間。バスケットボールが顔面に命中し、俺は尻餅をついた。

「よそ見すんなよ……。翔也、大丈夫か?」

「ああ、わりい……」

 俺は立ち上がった。女子の方はまだ盛り上がっているようだ。

 すると、俺のすぐ近くで笛が鳴り響いた。

「試合終了! 負けた方は後片付け、よろしく!」

「くっそー! 翔也の所為で負けちまったじゃねえか!」

「な、俺の所為かよ……」

「お前がよそ見しなけりゃ逆転してたかもしれないだろ!」

 同じチームの智明が、スコアボードを指さした。ボードには21-19と記されている。

「と、いうわけで。後片付けよろしくな!」

「俺一人でかよ……」

「まあまあ。ボールくらいは片付けといてやるからさ」

 智明は転がっていたボールを籠に戻し、倉庫の方まで運んでいった。

「はぁ……」

 確かにこの試合で負けたのは俺の所為だ。女子の方に気を取られてボールを取り損ねたのだから。

 ため息を吐きながら、俺は使ったコートにモップをかけ始めた。

「それじゃ、お先」

「おう」

 智明はボール以外の用具も片付け、先に体育館から出て行ってしまう。

 俺は手早くモップ掛けを終わらせ、体育館を出た。

「あ……」

 昇降口で靴を履き替えていると、後ろから声が聞こえた。振り返ると、先ほど歓声を浴びていた神薙伽耶が俺の方を見ている。両手いっぱいに袋をぶら下げて

「伽耶か。今日も大活躍だったみたいだな」

「翔也の方はダメダメみたいだったけどね」

「うっせー。お前に気を取られてたんだよ」

「な、なにそれ。どういう意味よ」

 伽耶は顔を赤くして言った。

「どういうって、いつも通り活躍してたんだなって……」

「あっそ」

 ふてくされたように伽耶は自分の靴を履き替えた。

「今日もまあ、大量にもらったなぁ……」

 伽耶の両手を塞いでいる袋を見て、俺はため息を吐いた。

「せっかくプレゼント用意してくれたんだから、断れないじゃない……」

「なんだそれ。モテる女子は言うことが違うな」

「それやめてよね!」

 伽耶は袋で俺のことを殴ると、歩いていってしまった。

「待てって。一緒に帰ろうぜ」

 俺は慌てて伽耶のところまで歩くと、伽耶の持っている袋に手をかけた。

「両方持って歩くの重いだろ。片方持つよ」

「あ、ありがと……」

 伽耶は顔を逸らしながら俺に袋を渡した。

「今日、初めてお前が女子に囲まれてるところ見たけどさ。お前って結構可愛いところあるのな」

「は、はぁ? なにそれ、意味わかんない」

 伽耶は顔を真っ赤にして俺の肩を叩いて、そっぽを向いてしまった。

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