その4 妖精さん
俺は今猛烈に悩んでいる。
当然これから先の旅のこと……ではなくあの妖精には何と名前をつけようか、というところだ。
「緑色だしリーフとか?いや、安直すぎるよな……。そもそも妖精ってどうやって名前を付けているんだ?」
肝心の妖精さんは俺が着ていた服のポケットの中に興味津々である。
まあ変なものが入っているわけじゃないだろうし放っといても大丈夫だろう、多分。
しばらく考えていたが全然決まらないため、とりあえずこの部屋を出ていくことにした。
出ていこうとドアを開けようとすると妖精さんは服の袖をくいくいと引っ張った。
「クローゼットの中は見ましたかー?お着替えやかばんが入っていますよー」
なかなかに気が利く妖精さんだ、言われたとおりにクローゼットを開けると確かに着替え一式がリュックとともに置いてある。
これも「能力視」で見てみると素材はほぼすべてがイトマキカイコのわた(つまるところ綿だ)で出来ていてシンプルながら普通に使える。
リュックはアークドラゴンの革で出来ていて、冒険者には必須のアイテムだとかなんとか。
きちんと荷物を入れたあとリュックを背負って今度こそドアを開ける。
ドアを開けると廊下があり、その廊下を少し進むと談話室とカウンターがある。
朝なので空席が多かったが数人の人と目が合った。
さっさと通り抜けてしまいたいところだったが、運が悪く一人に目を付けられてしまった。
「オマエ、金持ってそうだな」
_____きょかんが あらわれた!
ステータスを見るかぎり能力とかは特になさそうだった。
だが、後ろからヤジを飛ばしているグループのリーダーだそうで、おそらく強そうではない俺を狙っているといったところだろう。
まあ、丁度いい腕試しといったところか。
神様から授かった「運命視」と「肉体強化」をフルに使える時が来た!
……結果から言おう。
俺、強い。
肉体強化が普通に強かったせいかそもそも相手の攻撃はたやすく避けられたし、ステータスには戦闘時の弱点が見えるというおまけつき。
一撃で巨漢を沈没させてしまったのだった。
「うーわ、ヤバいなこれ……」
先に絡んできたのは向こうなので正当防衛が通用するが、それにしたって一方的すぎる。
面倒なことになると嫌だったのでさっさと退散することにする。
唯一幸いだったことは妖精さんはポケットの中で寝ていたため事の始終を見ていないことだ。
その時に思い付いたのだ、妖精さんの名前を。
大切にしたい、小さくて綺麗な宝物。
その後戦ったこともあってかお腹がすいたため、近くにあった食事処に立ち寄った。
その匂いにつられて妖精さんは起きる。
「おいしそうなにおいがしますー!」
嬉しそうに跳ぶ妖精さん、俺はその妖精さんにこう言う。
「これからは、エミィって呼んでも良いかい?」
妖精さんは振り返ると嬉しそうに言う。
「良いですよ!よろしくおねがいしますねー!」
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