転生先の最高神が超マイナー神様でした!

夏樹

その1 転生してしまいました

 突如として現れる白い空間。

 俺、隅野すみの 光正こうせいはのっぺりとした広い空間の中、白い髪と髭を伸ばした色白で純白の服を着たおじいさんと机を挟んで座っている。


 にしたってこんな白い空間に白で固められた服装をしているとなんだか見分けがつかなくなってくる。

 対して俺は普段着。悪目立ちもいいところだ。


「誠に申し訳ないのじゃが、お主は事故で死んでしもうた」


 おじいさんは肩身を寄せて申し訳なさそうにこちらに言うが、正直何かの実験かと思った。

 だってあまりにも実感がなさすぎる、確かに合成映像かのようにも見えるこの白い空間にいることが何よりの証拠なのだろうけど……。


「事故って……、どういう感じの事故でしたか?」


 そもそも記憶がない。

 事故で死んだのなら痛いだとか辛いだとか多少なりともあったのではないのだろうか?


「警察に追われていた時速120キロ超えの四トントラックが赤信号にもかかわらず飛び出してきたのじゃ、お主はそのトラックにはねられて死んだのじゃ。ちなみに58メートルを吹っ飛んだというのも分かっておる」


 そりゃ即死だわ。

 なんかもう凄すぎて悲しさを通り越して笑いすらこみあげてきた。

 自分が死んだと報告を受けて笑う人間もそうそういないだろう、でもこんなに殺しにかかってきている状況もなかなかない。


 おじいさんは困惑しているようにこちらを見ていたが、おそらく精神が崩壊しているとでも思ったのだろう。

 何も声をかけてこないのでとりあえず笑いがおさまるまで笑い続けた。


「お主、少しは落ち着いたかのう……?」


「オチはついたのでもう大丈夫です」


 渾身のギャグは気付かれさえされずにおじいさんは話を続けていく。


「それでの、お主にはこれからわしが創った世界で暮らしてもらおうと思うのじゃ」


「それは、どうして?」


「運命的にはお主はまだまだ死ぬべきではなかったのじゃよ、それが、どこが狂ったのかその帳尻合わせがお主に来てしまった、といったところじゃろうな……」


 なるほど、本来なら生きているはずなのだから天国や地獄にすら行けないというわけか。

 それなら仕方がない。


「それと、言いにくい事なのじゃがその世界に行ったらやってほしいことがあっての……」


「何かあるんですか?」


 例えば勇者になって魔王を倒すとか?魔法研究で自由に魔法が創れるとか?

 だが、そんな幻想は一瞬にして砕け散った。


「わしが創りだした世界にも関わらず、わしを信仰してくれる人間が少なすぎるのじゃよ」


 俺の頭の中に「なぜ?」という疑問が浮かび上がる。

 そんな困惑している僕もスルーしておじいさんは続けた。


「わしを、布教してはくれないかの?」

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