異世界人の就職事情(仮)
春夜戀
プロローグ 世界の終わりは世界の始まり
世界は救われた。
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といっても、地球上の多くの国々は壊滅状態。
100億人近くに達していた人口も今では約10億人にまで減ってしまった。
全人類の10人に1人が死んでしまった計算になる。
日本も決して例外ではない。約9700万人いた人口が約3000万人にまで減少。国土の大半が居住不能となり、人が住める土地は以前のたったの5分の1。急激な人口の減少に伴い、経済も急速に縮小した。その結果、地方のインフラを日本政府のお金で支えられなくなり、地方の交通、水道・電気などの生活インフラが停止した。幸いなことに、東京都および京都府近辺は、被害が少なく済んだ。そのため、現在ではほとんどの日本人が東京・京都周辺に移住し、都市圏集約型の生活が営まれている。集約の結果、景気の後退にもかかわらず、多くの国民が災厄以前の7割ぐらいの生活水準で暮らすことができている。
けれども、都市圏より少し外に目を向ければ、痛々しい災害の爪痕が残っている。
あか。あか。あか。あか。真っ赤。
血のように真っ赤な世界。
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今から10年前。人類は未確認生命体から襲撃を受けた。
宇宙飛行士が着用するような分厚い防護服を着用した二足歩行生物が突然アメリカ大陸に上陸。その数、推定1万体。未確認生命体は群れをなしてアメリカ中を進軍した。その未確認生命体は体中から赤いガスを噴出していた。そのガスを吸引した生物は植物だろうが動物だろうが人間だろうが関係なく死滅した。赤い霧は、未確認生命体が通り過ぎた後も大気中にとどまって消失することはなく、霧の発生地域では、鳥や犬猫などの動物の死骸が山積みとなった。
もちろんアメリカ政府も指を加えてその状況を静観していたわけではない。政府は陸軍・海軍・空軍の全勢力を投入して応戦した。しかし、未確認生命体が着用している防護服は非常に固く、銃はおろか砲弾ですら貫通できなかった。赤い霧の毒は最新鋭の感染防護服を着用下でも体内に侵襲し、霧の中では1時間生きられれば良い方だったので、軍人は次々と数を減らしていった。そして、未確認生命体への攻撃手段が何一つ見つからないまま月日が経過し、2年と経たずにアメリカ全土が赤い霧に飲み込まれた。
誰が言い始めたのかは定かでないが、謎の生命体からもうもうと立ち上る赤い毒が曼珠沙華の赤い花びらを連想させ、曼珠沙華の英名red spider lilyから、その未確認生命体は
アメリカに続いてまもなく、中国、インド、ロシアも順々に赤い霧に侵されていった。世界中が、
そして、ついに日本に
誰もがもう日本も終わりかと思ったその時……
地球を救う使者が東京の空から地上へと舞い降りた。
その数なんと1000人。
全員2足歩行で限りなく、人間に近い容姿をしていた。しかし、その中には、耳の長い者、体の色が緑色の者、羽の生えた者などおよそ人間とは思えない異形の者がたくさん存在した。
そう、彼らは異世界からの使者。
最初は新たな敵の襲撃かと多くの国民が嘆き悲しんだが、いい意味で私たちの予想は裏切られた。彼らのほとんどが日本人に友好的な態度を示し、
ある者は、高い身体能力をもち、ある者は魔法を使い、ある者は知力に優れていた。
異世界からの1000人の使者は、それぞれが持つ力を駆使して、
そして、世界に平和が訪れた。
Fin
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本当だったら、このままHappy Endで終わらせたい。
でも、世界に平和が取り戻されようが、大きな戦果を残して人類の英雄になろうがそんなことに関係なく人々の物語は続いていく。
世界の救済という明確な目標を失って、何をしたらいいか途方に暮れる者もいるかもしれない。元の世界との常識の違いから生活に馴染めずに苦労する者もいるかもしれない。
果たして、彼らは幸せな人生を送ることができたのだろうか。
結局のところ、幸せになれるかなれないか、それはその人の努力次第。
この物語はそういうお話だ。
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