第35話 俺は何を信じるべきだ…。
「守りたかった…ってどういうことだ?」
誘拐犯の松川くんが悠人くんを守りたかった…。俺には理由が分からない。
「悠人は、虐待…されてたんだよ」
虐待って…。
「虐待!? 悠人くんが?」
嘘だろ…。虐待ってことは華さんが? いや、あんなに悠人くんを大好きな華さんがそんなことするはずがない!
「あぁ、悠人は虐待されてたんだ。だから、家族の元に返すなんて絶対だめだ! 今、悠人はどこにいるんだよ!」
「ちょっ、ちょっと落ち着いて! 誘拐の犯人だという君に悠人くんの居場所を教えることはできないよ! それと…今から署に連絡するから君はきっと処罰されることになる」
「…そうか。俺が悪者になっちまうんだもんな。でも、悠人を守らないと…」
彼は本気で悠人くんを心配しているように見える…。でも、暴力を振るったことをごまかすための罠かもしれないし…。
「君の話は署の方が聞いてくれるから、その時に話してくれるかい?」
悠人くんが虐待されていたと話す松川くん。松川くんを慕う悠人くん。虐待なんてする気配もない、悠人くんを愛する華さん…。俺は誰を信じたら…。
「警察ってそんなもんか。あんたみたいな一生懸命なやつならわかってくれると思ったのに。悠人に何かあったら、お前のせいだからな」
「…」
俺は何も言い返せなかった。何を、誰を信じていいかもわからない俺にできることなんて…。
「あ、悪い。感情的になっちまった。いや、そのおまわりさんも頑張ってるのに…。でも、俺は悠人を守りたい。刑務所か少年院か知らないけど、俺がここに戻ってこれる時まで…悠人を頼むよ」
松川くんの瞳に嘘は感じられない…。俺はこの誘拐犯の高校生を信じてもいいんだろうか…。もうすぐ署の人が来てくれるだろう、そうしたら松川くんが捕まって…松川さんは釈放か? はぁ、一気に事が起き過ぎて何がなんだか…。落ち着いたら悠人くんに会いに…行くか。
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