後悔でしか恋を分からない

くれまる

後悔でしか恋を分からない

「今日はありがとうございました。また会ってくださいね。」

そういって、改札を抜ける。少し浮かれた気持ちで階段を上り、丁度来ていた電車に乗る。LINEでお礼のメッセージでも送ろうか、そう思いLINEを開く。今日交換したばかりのLINEのトークを開き、文字を打つ。が、面倒な女だと思われないだろうか。あと二駅分くらいの時間的余裕があったほうが、簡単に振り向くような女に思われなくていいだろう。それにしても、今日会った男は良かった。性格とか、そういうの以前に顔が好みだった。マッチングアプリのプロフ写真だと、そんなに好きじゃなかったけど、本物の彼はなんていうか、陰キャ顔で好き。別にけなしてるわけじゃなくて、眼鏡かけてるからか、理系に多そうな顔だった。そこがまた好き。今までマッチングアプリ経由であった男は何人かいたが、顔が好きになれず、デートを素直に楽しめなかった。やっぱり顔が一番か。別に美男子がいいという高いハードルがあるわけじゃないのに、なかなか好み顔に会えないものだ。そろそろ二駅目に到着しそうだ。

『今日はありがとうございました。楽しかったです。また、遊びに行きましょうね』

と軽いメッセージを送る。

返信が早く来てほしいような、来てほしくないような。ソワソワしながら他のアプリを開く。Twitterを開き、TLを追っていく。内容を確認しているようであまり、頭に入ってこない。それでも、水色のアイコンが視界に入り、動きを止める。

「卒論やべえ」

そんな、なにげない同期の一言。それでも、つい目を止めてしまう。あー、やっぱりこの人のこと好きかも。意識してしまっている自分がいる。LINEの通知が来る。もう、マッチングアプリの男なんてどうでもいい。今は、好きな同期のことで頭がいっぱいだ。あー、早く同期に会いたい。LINEでも送ってしまおうか。どれだけ、マッチングアプリで人と知り合おうと、私はこの同期が好きなんだ。なんでこんな風にアプリで男に会いに行ってしまったんだろうか。馬鹿なことをした。こんな後悔でしか同期への恋心を確認できない。

「私も卒論ヤバイ(笑) がんばろうね」

そんなリプを送り、電車を降りる。

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