弁護士のサトウ(嘘)!主に優しさとハッタリで溢れてます。
おしゃもじ
モンスターの損害賠償請求を解決せよ!
第1話 「やれば、できる子」を信じて良いものか?
「私は弁護士です!」
いや、俺は弁護士ではない。ただの受験生だ。なんでこんな、ハッタリをかますことになったのか。
<゜)))彡<゜)))彡<゜)))彡
大昔は小さな集落だったが、今や国となったオミソ国。大国マドレーヌ王国と同盟を結び、帝国とも良好な関係を保ち、国は平和そのもの。
法治国家で治安もよく、移住するものも多い。
しかし、景気の悪い時は、悪い。そんなオミソ国で悩める青年が一人。
<゜)))彡<゜)))彡<゜)))彡
俺の名前はサトウ。26歳。オミソ国の一般家庭に生まれ、ごく一般的に育ち、底辺の大学を卒業。
その後、帝国出資の企業に務めるものの、オミソ国ではそのビジネスモデルは上手くいかず会社はまさかの撤退! 俺は若くしてリストラをくらう。就職難でやっと入社し、それなりに頑張ったのに。
失意のどん底で、俺は子供の頃から言われきた言葉を思い出す。
「やれば、できる子」
そう! 俺はその言葉を信じることにした!
そして、底辺大学を卒業した俺は弁護士を目指すことにしたのだ! 何故って? なんか、ちょっとカッコよかったから。
いや、待って! 嫌わないで! 実は本当の理由があるんたけど……、恥ずかしくていえないや。
あと行政の間違った政策で弁護士は今数を増やしていて、ダブついている。食えないヤツもいっぱいいるらしい。なぜそれなのになるのかって? だって、なら受かりやすいってことでしょ。しかも俺なら食える気がする。待って、待って、嫌わないで!
今までにないくらい勉強したんだ。本当に勉強した。
で、結果は3回目で不合格。3回で落ち込むなって? まあ、そうなんだけど。バイトと勉強漬け。ちょっと疲れはするよね。
そんなわけで、俺はバカンスに出ることにした。というかリゾートバイト。村で住み込みでバイトをしながら、勉強。いい案じゃない!? お金も入るし、一石二鳥。
俺はオミソ国発祥の地、その名もオミソ村に来た。
だが、おかしい。めちゃくちや錆びれている。観光客も大していない。建造物のメンテナンスもしてないのかボロボロだ。昔学校の教科書に観光客がひっきりなしって書いてあったような。
とりあえず国の象徴で有名な銅像「デメキン様」に合格祈願でもするかな。
デメキン様があるはずの噴水にデメキン様が……ないッ!!!
俺は近くにいた人に思わず尋ねる。
「あの! デメキン様は!?」
「あー、5年前に盗難にあってなー」
「5年前!? そんなに前!? 大事件じゃないですか! 国の象徴でしょ!? メディアとかも報道してなくないですか!? 行政で捜査に乗り出すべきでしょう」
「いや、そもそも、建国者が偶像崇拝とかその辺を堅く禁じててな。もともとデメキン様もその一つだからな。行政も大きく動かないらしい。建国者の名前も残ってないし」
「名前が残ってないのは学校でやりましたけど。欲のない奴らですよね。俺なら建国なんて偉業を成し遂げたなら、褒め称えられたい」
「兄ちゃん、若いな!」
「てか、だから錆びれてるんですか……。あ、すみません」
「いやー、実際そうだし。前から、ここ最近はあんまり。観光資源に頼り切っちゃって、ろくなサービスもしてこなかったからかなー」
「そんな理由……」
愛国心なんて感じたことないけど、俺はデメキン様のいない噴水を見上げる。寂しいもんだ。一気にテンション下がるよ。気分転換に来たのにな。
俺はバイト先であるデメキン様ホテルに行く。やっぱり、錆びれてる。そもそもバイトが必要なのかな。俺はご主人に挨拶する。
「こんにちは。今日からお世話になります、サトウです」
「おお、いらっしゃい。よろしくね」
「あのー、失礼を承知で申し上げるんですけど、人手って必要でしょうか……。あ、いえ、雇って頂けるのは本当にありがたいんですけど」
「ああ、いいんだよ。こうなっちゃうと人手不足になってね。ろくなサービスできないと悪循環になっちゃうから」
「なるほど」
「よろしくね」
「はいっ!よろしくお願いします」
俺は深く元気よく頭を下げる。とりあえず村の人は、みんないい人そうで安心した。さすが建国の地の住人だ。しかし、このホテルは俺とご主人だけか。バイトラブなんて、ないな。勉強に集中できるか。
もともと地の利が悪いオミソ村には、やはりあまり観光客はこなかった。しかし、連休なんかになれば、多少は賑わいをみせ、勉強とバイトでなんやかんや、充実していた。村の人達は気軽に声をかけてくれて、仲良くもなった。リストラ、不合格ですさんだ、俺の心も大分回復した。
そんな時、事件が起きる。
<゜)))彡<゜)))彡<゜)))彡
俺は買い出しに行くため、広場を横切っていた。
すると、いかにも金持ちという風情の観光客が、摩訶不思議なモンスターに首輪とリードを付け連れて歩いている。犬のような形だが、大型の犬よりは一回り大きい。目は無数にある。オミソ国は多様性を掲げる国家。いろんな習慣のある人を受け入れる。というか、もともとの習慣の人もいるけど、今、金持ちの間で、モンスターをペットにするのが流行ってるらしい。
しかも、このモンスターは躾がなってない。さっきから、好き勝手な方向に行きたがって、金持ちはリードを握っているので、精一杯だ。
デメキン様焼きを売っている屋台の匂いに釣られて、勢いを増していくモンスター。危なっかしいなーと思いながら見ていると、デメキン様焼きを売っている売り子の女の子、ララちゃんに飛びかかる。モンスター、相手が悪い。ララちゃんは強力な能力者だ。来年にはオミソ国の軍学校に入ることが決まっている。当然、能力など使わずに拳でモンスターを弾きとばす。
あー、良かったと思って、その場を立ち去ろうとすると、金持ちが騒ぎ出す。
「おい! そこの女! 暴行罪だ! マーガレットちゃんになにするんだ」
ララちゃんは気の強い女の子だ。金持ちをにらみつける。てか、マーガレットっていうんだ。そのモンスター。
「あ?」
ララちゃんの目力に、少し怖じけ付くが、金持ちが続ける。
「マーガレットちゃんが怪我をしたんだ! 当然だろ?」
ララちゃんが屈んで、モンスターを優しく撫でる。
「悪かったな」
モンスターもララちゃんの手に頭を擦り寄せる。なんて微笑ましい。ララちゃんは金持ちの方をみていう。
「大丈夫みたいだ」
しかし金持ちは納得がいかないようだ。
「お前能力者か? だから能力者は嫌いなんだ。腕力だけで解決しようとして。訴訟だ! 訴訟!」
「いや、大丈夫だろう」
「この小娘が。大丈夫でも暴行罪だ!」
近くの婦人が声を上げる。
「そんな、この子は来年、オミソ国の軍学校に行くことが決まってるんです」
あー、余計なことを。守りたい一心なんだろうけど。
「はーん。じゃあ、その進路握りつぶしてやる!トラブルがあったら学校側もしぶるだろう」
ララちゃんが、また金持ちを睨みつける。
「上等だ! やりたきゃやれ!」
もー! この子もどこまで気が強いの。俺はつい、しゃしゃり出てしまう。
「あのー大切なご家族だと思うんですけど、動物等はあくまで物なので、暴行罪ではなく器物損壊罪。しかもマーガレットちゃんは無事なので、器物損壊未遂罪というのはないので無罪かと……」
「マーガレットちゃんが物!? お前誰だ!?」
「えーと、マーガレットちゃんを、しっかり見ていなかったことに、あなたに過失があるとすると正当防衛も該当しまして、こちらでも違法性が阻却されるのでこちらでも無罪」
「お前、何者だ!」
そこへ、ホテルのご主人がやってくる。
「サトウ君はいつも難しい本を読んているんだ」
え、ご主人。めちゃくちゃ隠れてやってたのにバレてたんですね。俺は誰にも勉強しているのは、言わないんだ。崇高な精神からじゃない。落ちた時に恥ずかしいから。
「サトウ君! 弁護士なんだろう!?」
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