第1部 魔王討伐世界救済編 4章

4章


ー …って……きてっ…。 ねぇ、起きて!ー

「はっ!?」何かに起こされたかのように俺は目覚めた。変なことにさっき聞こえた声は身に覚えの無い…無いはずなのに何故だか聞き覚えのあるような不思議な、懐かしささえも感じた。


「!? ジルド? 目が覚めたのね…。」

「シスター…ビエラ……俺一体…。」

目が覚めた俺に最初に気づいてくれたのは俺たちの親代わりをしてくれているシスタービエラだった。

「!! シスター!! 俺の目どうなっている!?」

意識を失ってふと忘れていたが、魔獣と戦ったときに起きた不思議な現象。そして自分の目の異変、慌てて左手の甲を見たがあの時浮かび上がってた紋章の様なものは無かった。

「目、ですか? いえ特に問題はあるようには見えませんが何か怪我でもなされたのですか?」

「あっ、いや何もないならいいや…大丈夫。」

目の方も何も無かったらしい、あれは夢だったのか? でも仮に夢だとして俺たちは何で無事なのか? …俺たち?

「シスター!! イデアとサラは!!??」

「ええ、イデアは無事よ。 ……ただサラだけは、ジルド心して聞いて下さい…」

シスター、何でそんな畏まっていうんだよ? その一言に俺も心から胸騒ぎがした。

「サラは、魔獣の呪術に掛けられていたようでこちらも最善を尽くしたのですが…まだ目覚めていないの……。」

俺はシスターの言っていることに対して理解しがたく思わず沈黙してしまった。

「ジルド…? ジルド、気を確かに!!」

「!? あっ…シスター…サラはいまどこに?」

「彼女の部屋に寝かせています…。」

俺は場所を聞いたのと同時に何事もなかったかのようにサラの部屋に向かった。


サラの部屋の前にはシスターミオリアが立っていた。

「ジルド、やっと起きたのね…。 母さっ…シスタービエラから話は聞いた?」

「うん、サラを起こしに来た…ちょっと遅くなったけど俺たち3人の大切な記念日だから。俺はずっと忘れてしまっていたけど…。」

「!? ジルド……、あんた……。」

シスターミオリアは何故だか俺を哀れむようにその場で泣き崩れていった。

ーコンッコンッ!ー

「サラ、入るぞ」

部屋に入るとベットの方にそれは天使の様な透き通る白い肌の優しい表情で眠るサラの姿があった。

「サラ、起きるぞ。 悪いな忘れちまってて。 お前がせっかく企画してくれたんだし早く起きようぜ! 俺動きすぎて腹減ってるしよ……サラっ!」

「ジルド、もうやめろ…サラは。」 後からイデアがサラの部屋に入ってきた、イデアが何を想って俺にその言葉を使ったのかは俺が一番分かっていた、正直素直には受け入れられなかったが…。

「………、イデア…俺ほんと馬鹿だよな…?」

「あぁ…、知ってる。でもそれはきっと俺もお前と今同じこと考えていると思うし、その気持ちに今正直になってるお前はここに居る誰よりも優しいやつだぜ兄弟…。」

そう言いながら情けない顔で目から溢れ出る涙が止まらない俺をイデアはそっと抱き寄せた。

「イデア…俺たちどうすれば本当の意味でサラを助けられるの…?」

「分からない…。だけど可能性は無くはない、現にサラは魔界の呪術で眠っているだけだ。と言うことは俺たちが本当の勇者になって魔王でも何でも倒してサラを目覚めさせる方法を探しに行けばいい!」

こんな時にまでも勇者勇者ってイデアは本当にそれしか無いのかよって思ったけど今はイデアが提案してくれたその曖昧だけど何か説得力が感じる言葉に少しは心に穏やかさを取り戻せた気がする。

今の俺らでは君を救うことはまだ出来ない、だけどいつか必ず…絶対に救ってみせる。

それまでゆっくり眠っていてくれ、おやすみ…サラ……。


ー1週間後ー


あの事件から早一週間が過ぎた。俺とイデアはシスタービエラに無理を言って何とかサラを救う手がかりを掴むために旅立たせてもらえる許可を得た。

「良いことですか貴方達、くれぐれもサラのためと言っても無茶だけはしないで下さい。貴方達に何かあればそれこそサラが報われません。」

「あぁ!大丈夫だシスター、次にここに帰ってくるときは3人とも元気に揃ってるよ!」

「そうですか…、そうですよね。貴方達が戻ってくるまでサラの事は私たちに任せてください。」

「シスタービエラ、よろしくお願いします。」

「えぇ、言ってらっしゃい。」

シスタービエラからの激励を受け、俺たち二人は教会から旅立つことになった。


教会から出るとき後ろから誰かが走ってきたこの神聖な教会で何かと慌てて走り回ってるとしたら一人しか心当たり無い。

「ハァ…ハァあんた達!! ちょっ…ちょっと…ハァ…待ちなさいよ!」

振り替えると、やはりそこにはシスターミオリアが息を切らして走ってきていた。

「ハァ…ハァ……これ! 持っていきな! 町の方までは意外と遠いからね!」

そう言ってシスターミオリアは俺たちに弁当を作ってわざわざ持ってきてくれた。

「あんた達、頼んだよ。」

「「はいっ!!」」 シスター達の期待を胸にしまい込み俺たちは育ちの故郷ドンガを後にし、まずここから近い町『ブノール』へと向かった。


ドンガから旅だって1時間弱、そろそろお腹の減りを感じてきたタイミングだった。

「イデア、一旦休もうぜ。 ちょっと腹減っちまった。」

「なんだ、ジルドもうくたばったのか? まぁ俺もそろそろ小腹が空いてきたところだ。早速シスターの弁当でも食べようぜ。」

二人の意見が噛み合ってとりあえず、道の脇にあった少し大きめで腰をかけるのに丁度いい岩を見つけたのでそこで休憩することになった。


弁当を見てみるとシンプルながらも見た目美味しそうなサンドイッチが詰められていた。旅のお供には最高の弁当だぜ。

「いただきまぁ~す♪」 もぐっ! ………。

「? ジルドどうした?? あっ!あまりの空腹に感動してるんだろ?そんなに美味しかったのか、このサンドイッチ?」 もぐっ! ………。


ーぱたんっー

そう言えばシスターミオリアって今まで一度も飯作ってるところ見たこと無いや、そーいうことね…。


旅立って僅か数時間でパーティー(二人が)全滅した。

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