薬屋と鍛冶師は昔を語る

エアルとサムソンがルイーゼ達に薬を渡した日の夜…アップルR-12の繁華街に位置するとある飲食店にて。

「ねえ、1つ聞いて良い?」

薬屋ヴェルデ―アは向かいの席に座って一緒に料理を食べている鍛冶屋のローゼンに話しかけた。

ローゼンは料理を飲み込むと、返事をする。

「なんだい?ヴェルデ―ア」

「ローゼンに鍛冶屋としての技術を叩き込んだ師匠っている?いたとして、どんな人だった?」

ヴェルデ―アのさり気ない質問にローゼンは答える。

「師匠は…ピオニー師匠は、まあ…頑固で融通が利かない所のある人だけれど、信念があった」

「ピオニー?あの伝説の鍛冶師がローゼンの師匠なの?」

ヴェルデ―アはローゼンの師匠の名前に驚く。

「ピオニー師匠自身は自分の勝手な我儘を突き通し続けたら、いつの間にかそう呼ばれていたって認識らしい。」

「我儘?どういう事?」

ヴェルデ―アは不思議そうに聞く。

「ピオニー師匠が街の治安を守る騎士団、ピースキーやナイトサグやアクレリアスといった人々からの信頼の特に厚い宗派の教会の御堂騎士団、人間性も実力も確かな冒険者とか辺りに優先して良い武器を提供しているのは有名な話だよな?」

「うん、まあね…」

「逆に、略奪や恐喝…そういった罪もない人々を傷つける行為に自分が作った武器が使われた時こそが師匠が一番悲しかったんだ。それを知った師匠は…今にも泣きそうな顔をしていた…」

「そうなんだ…」

ヴェルデ―アは少し沈んだ表情をした。

「でも、ローゼンの作る武器もすごいけれど…あなたのピオニー大師匠にライバルとかいなかったの?」

「いたよ。ピオニー師匠は…確か…自分と同じ鍛冶師を師匠として内弟子生活を共にしたピオニー師匠自身含めて、5人のきょうだい弟子の一人であるジュスゾって人が生涯のライバルだったって言ってたっけ?」

「だった?もう死んだの?」

ヴェルデ―アは不思議そうに聞く。

「いや、多分ジュスゾって人はまだ生きている。けれど…ピオニー師匠が俺に言うには…」

ローゼンは悲しそうに言う。

「ジュスゾには…武具の出来不出来に一番影響する作る側として大事な…人間性が無かった、って。他のきょうだい弟子たちはどうかは解らないが、ジュスゾが自身の人間性を改善できなければ、一生涯自分には追い付けないだろう、とピオニー師匠は言っていた。」

「そう…そういうジュスゾみたいな人こそ、本当に可哀想なのかもね」

ヴェルデ―アは悲しそうに返事をした。

「さて、俺の師匠の話はしたよ。ヴェルデ―アの師匠はどんな人だったのさ?」

「私に師匠なんていないわ。オレンジL-09のアカデミーで薬学や弓術を学んでいたから、師匠との関係ってどんなものか気になって。」

「ははは…俺の方はアカデミーでの生活の方が気になるよ…」

さて…元々、ヴェルデ―アは男として好意を寄せているローゼンとのデート目的で、食事に誘った以上、ここからが本番だ。

「あのさ、ローゼン…あたしの事、どう思っている?」

「どう思っているって…同じ冒険者を支える生産職同士としての仲良くしていきたと思っているさ!」

「うん、あの…もし…良かったら…私と一緒に…」

「ああ、俺達で一緒にエアル達の冒険を支えてやろうな!!」

ローゼンがヴェルデ―アからの好意に気づく様子はまだ無かった。

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