4月1日 新たなスタート

14-1 それでいいし、それがいい

 今日から新年度だ。

 だが世記としきにとっては春休みの一日に過ぎない。

 携帯電話を手に取って、布団の中でゴロゴロとしていた。

 新着メッセージが届いて、世記は笑う。


『兄ちゃん、関東来ないのか?』

『兄ちゃん、家帰ってこないの?』


 リュウと、弟の俊記しゅんきのメッセージがそっくりすぎる。


 宿題は終わらせた。実家に帰ってもいい。

 だが二泊ほどでこちらに帰ってくるのは正直言って面倒くさい。

 どう断ろうかなぁと思っていたら、寿葉ことはからも追い打ちが来た。


丹生にぶくんこっちこないの? だったらわたしだけリュウくんと会ってこようかな』


 こういわれると途端に会いに行きたくなるから不思議なものだ。


『それじゃ、明日から実家に帰る話進めるから、明後日にでも会うか?』


 寿葉、リュウと世記の三人のグループメール「に×3=メール」に返信しながら。世記はこれまでのことを思い出していた。


 リュウから「携帯買ってもらえた」とメールが来たのは、春休みに入ってすぐのことだった。


 二月に里親候補とのお試し同居を始めて家族になじんだリュウは、そのまま正式に養子縁組され、新見にいみリュウとなった。

 新しい苗字も「に」で始まるからこれからも「に×3=同盟」だとリュウが喜んでいた。


 まさか、鈴木はその辺りまで考えて引き取り先を探したのか? と思ったが、さすがにそれはできすぎだろう。


 寿葉が東京に引っ越したのは、その次の日だった。

 見送りには行けなかった。寿葉と仲のいい女の子達が行くというので遠慮した。また二人は付き合ってるとかなんとか言われるのはお互いに面倒だ。


 しかしやはり直接挨拶もできないまま別れてしまって寂しさを感じる。


 そこで世記はグループメールを作成した。

 これで寂しさは少しぐらいましになるだろう。


 と思っていたのは数時間だけ。


 とにかくメールがたくさん来る。特にリュウから。

 嬉しくて仕方ないのだろう。


 などと考えていると早速リュウから返信が届いた。


『やったー。に×3=同盟、久々の再会だ』


 三人で最後に会ってから一か月半が経った。

 だが全然そんな気がしない。毎日会っている気さえする。

 に×3=同盟は、離れていても慌ただしくて賑やかだ。


 それでいいし、それがいいと世記は笑った。

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