雪降る日も。

@sakurabakoyuki23

第1章 憩い

ここは田舎にあるとあるカフェ。

いや、カフェと呼ぶには少しおしゃれすぎるかもしれないので、昔ながらの喫茶店とでも言っておこう。私の大切な空間、大切な居場所。


コポコポと音を立てる珈琲。祖父がずっと使っていたサイフォン。

サイフォンは高齢のお客さんには理科の実験のフラスコみたいだと笑われるのだが、比較的若いお客さんの方には素敵だとか雰囲気があると言ってもらえる。


田舎なもので常連のお客さんが多いし、立地的にも駅が近いのでフラッと立ち寄るサラリーマンなどもいるので経営は右肩下がりになることはなくぼちぼちと私は暮らすことができている。

祖父母が長年築き上げてくれたおかげで私は毎日楽しくキッチンに立ち、カウンター越しにお客さんと話すことができる。


祖父母が残してくれたお店を私はこれからも皆の憩いの場にできるよう切磋琢磨しているのだ。


「よう、冬美ちゃん。もう開いてるか?」


「いらっしゃいませ!どうぞどうぞ。」


「いつもの珈琲と卵サンドでよろしく。」


「はい、ありがとうございます。」


祖父から受け継いだ卵サンド。

何度も何度も練習した。外側はカリッと焼いてそれでいてふんわりしたパンにコクのあるからしマヨネーズを塗り、ぶ厚くて出汁の効いた厚焼き卵を挟む。

何気ないこの卵サンドは大人気で、私は他にあるハムサンドやオムライスなどのどのメニューよりも気合を入れて作ってしまう。


私にとって大切な祖父の味は、お客さんにとっても大切な味なのだ。


「冬美ちゃんも手慣れたもんだな。」


「そんな、まだ全然ダメで…おじいちゃんには到底及ばないです。」


「いやいや、そんな事ねぇよ。」


「ありがとうございます。」


「ばあちゃんに似て、冬美ちゃんも働きモンだよ。若いのによくやってるよ。」


「いえ、本当。私なんかまだまだです。」


「俺みてぇに時間外でも来る客の相手なんて大変だろ?」


「ふふっ、とんでもない良いんですよ。」


朝の9時からOPENしている







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