第12話 彼女から彼氏へ
拝啓 彼氏様
さて、今頃あなたは何も無くなった部屋で、玄関に残されたこの手紙を見ていることでしょう。
あなたとの4年間の同居生活と半年間の別居生活。
大変なこともあったけど、この先もずっとあなたと一緒に居られるんだと思っていました。
お義父さんもお義母さんも、あなたの双子の妹やお姉さんも私のことを、娘同然に可愛がってくれていました。
上司の方やあなたの友人たちとも、いい関係が続いていくんだと思っていました。
あなたが、あんな馬鹿なことをするまでは。
まさか、自分が採用した高校生バイトに手を出すなんて。
知っていましたか?
あなたのたばこケースに、彼女から私に当てつけるような手紙が挟まっていたこと。
「あなたとみた空一面の星と、眼下に広がる〇〇の夜景は素敵でした。」
〇〇の夜景って、私があなたと行くはずだった夜景スポットでしたよね?
挙句の果てに、あなたが私に頼んだことは何だったかしら?
「妊娠検査薬ってどこで買えるの?売ってるとこ知ってたら買って来てよ。」
はじめは、友達かとも思いましたが、まさか浮気相手の女子高生だったとは。
すべてを知った私は、あなたに別れを切り出しましたよね。
「最後に、彼女さんにあなたのことをお願いしたいから、一度だけ会わせてくれない?今度の日曜日の10時に、いつものカラオケ店で待ってるから。」
私は大人の女を演じつつ、呼び出されたままノコノコやってきたあなたと女子高生。
よほど見せつけたかったのか、私が買ったあなたとおそろいの私のシャツを、女子高生が自慢気に着てきたのを見た時、「こんな女が好みだったのか。悪趣味な女を選んだものだ。」と、私の男運の無さとあなたの女運の無さに呆れました。
でも、その場にいたのが、お義父さん、お義母さん、あなたの姉妹、上司と友人たちだったのは、あなたにとって意外だったようですね。
あの時のあなたの顔は、今思い出しても笑えます。
修羅場にすらならず、事の次第をしどろもどろに説明するあなたと、居心地の悪そうな女子高生。
バカな男。
4年も付き合っておきながら、私がやりそうなことを想像すら出来なかったなんて。
上司からは、大人として社員としてなっていないと怒鳴られエリート街道から外され、お義父さんとお義母さんからは絶縁され、姉妹からは軽蔑の眼差しで見られ、友人からは絶交宣言。
いい気味です。
私のことを、都合のいい女だと浮気しても気付かない、気付いても何も出来ないヤワな女だと思っていましたか?
そうそう。
あなたの服や持ち物は、お義父さんが処分するそうです。
この家にあったあなたと私が揃えた家具や電化製品などは、私が持って行っていいそうです。
なので、気分を変えて新しい生活を送って欲しいからと、お義父さんとお義母さんが用意してくれた新居に運びました。
引っ越し業者とお義父さんやお義母さん、お姉さんや妹たち、あなたの友人に上司さんも来てくれて手伝ってくれました。
本当に優しいいい人に恵りあえて、そこだけはあなたに感謝します。
新居の住所は、お義父さんたちが知っています。
女一人守れなかったあなたに、動物の命が守れるとは思わないので、この子達も私が連れていきます。
何も無くなったその場所で、あなた一人の稼ぎでどうぞ彼女さんとお幸せに。
追伸 伝言があったのでまとめて書いておきます。
お義父さん
「自分のやったことの責任は自分で持つんだな。お前に関しては、私たち家族は一切関与しない。お前も私達家族に一切関与するな。」
上司
「会社の社員寮は独身者専用だし、問題が起きると困るので貸せません。」
姉妹
「お兄ちゃんの事尊敬してたけど、お姉さん泣かせるようなことしたから嫌い。」
「最低。」
友人御一行
「お前との付き合いは長かったけど、今回はさすがに軽蔑する。あんなに尽くしてくれた彼女さんだったのに、お前はバカだよな。」
という事だそうです。私が肩代わりしていたあなたの車のローン、頑張って払い続けてくださいね。
敬具 元カノより
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます