第346話

 クラウス様の内面の声に私は問題ありませんと頷く。

意識が神経が心が感情が知識が全てが渾然一体となって私とクラウス様を繋ぐ。

クラウス様がどのような魔力を組むのか私がどのような術式を組めばいいのか理解し合える。


 背後に展開していた三角錐のビットは私の前に移動し六芒星の形に配置されていく。

それぞれが頂点に展開され、クラウス様の魔力が軌跡を描いていき巨大な魔方陣を展開する。

 そして私は手に持った神衣武器である弓を引く。力を少し入れただけで引かれていく弓は、その形を変化させながら周りに波動を撒いていく。引かれた瞬間、私の脳裏に展開されていた魔術を超える魔法である重力魔法の術式が矢となって顕現する。


「神格の位置を確認!放ち穿て地裂のジリオン!神弓一閃(エンドオブアース)!!」


 放たれた矢が展開されたビットに触れた瞬間、数千の軌跡を残しながら神衣化したアウラストウルスの体に突き刺さる。


「ぎゃあああああああああああああ」

 数千の退魔の矢が精神(アストラル)体(サイド)に身を置いていたアウラストウルスの体を破壊していくと同時にレオナとの神衣が強制的に解除される。

 神衣化が解除された事と神核を傷つけられた事で暴走を開始したエネルギーの影響からかアウラストウルスは体をよろめかせている。

 とどめを刺そうとしたところでアウラストウルスは、軍事開発実験センターではなく私とアリアが明けた穴から地上に向かってしまう。


(ユウティーシア!)

「はい、分かっています」


 アウラストウルスを追おうとしたところで私は足をつかまれた。


「レオナ?」

 掴んできた相手を見るとそこにはレオナが横たわっていた。

 彼女はすごく消耗しきっている。


「クサナギ殿、申し訳ありませぬ。神衣化をした事でやつの心が、感情が見えました。某は奴に騙されていたのですな」

 私はレオナの言葉に頭を振る。

 自らの肉親を盾に取られたのだ。

 私だってレオナに裏切られた時は、ショックだった。でも、それでもレオナとまたこうして話せる機会が得られた事の方がずっといい。

誤解したまま、すれ違ったまま分かれるなんて嫌だと思う。


「お願いがあります。某に某が行った事の始末をつけさせては貰えませんか?」

 

「で、でも……」

 それだけ体が傷ついてるのに戦うなんてそんなのは……。


(ユウティーシア、レオナの体には回復魔術が通じる。彼女の回復は私が行おう、彼女には彼女なりのけじめのつけ方があるのだろう?なら、それを手助けするのが友の役目だろう?)


 クラウス様の言葉を聞き、私は……。


「神衣解除!」

 私と別れたクラウス様は、レオナに近寄り回復魔術をかけている。


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