第328話

「はい、お母様。ご心配頂きありがとうございます」

 私はお母様の手を解き一礼して部屋から出た。

 公爵邸を出てしばらく歩くと飛行船が見えてくる。やはり大きい。私たちの姿を発見したのか飛行船は高度を下げ貴族街の広場に着陸した。


「ユウティーシア様、クラウス殿下。こちらからです」

 アリアの案内により飛行艇に入るとかなり広い空間であった。実際、外から見るのと違い内部は空間拡張しているのかとても広く作ってある。

 古代遺跡で見た技術も所々使われている。

 そして私たちがいるのはどうやら倉庫のようだ。いくつもの物資が積み込まれていて海の男たちのような格好をした人が一生懸命働いている。


「ユウティーシア、全部をクラウス殿下に話したのか?」

 近づいてきたコルク・ザルトが私に話しかけてくる。それに対して私は頭を振った。

 全部を教えられるわけがない。きちんと取捨選択してお母様にもお父様にも話をしている。全部を話したらきっとお父様もお母様も倒れてしまうと思う。

 それに、私が消滅する事はアリアやコルクにも説明はしていない。でも神衣をすれば伝わるから今はその事を言う必要はないだろう。

 

「それにしても、これだけの船をずっと教会は封印指定して持っていたんですか?」

 私は全長100メートル、高さ6メートル近い飛行船を想像しながらコルクに尋ねると


「そんな事あるわけがないだろ?これは元々、海賊が海洋航海のための船として使っていたのを拿捕したものなんだ。だから船としては使われていたんだ」

 なるほど、空を飛ぶ機能が起動したのはつい最近だったけど海の上での航海では普通に使っていたと?神代時代の船を航海で使うとかまた信じられない人たちだと思うけど、そのおかげでこうして望みが繋がったのだから良しとしよう。


「それで操縦とか管理は教会がしてらっしゃるのですか?」


「いいや、その海賊共にやらせてる。教会がある程度の地位を約束したらコロッと何でもしますと言ってきたからな。彼らの話によるとこの船は、彼らが海に投げ出されたあと漂って到着した島にあったらしい。そして彼らは自分たちが追い出される原因を作った人間に復讐をするために金品を強奪して力を蓄えてたようだな」


「ひどい人もいるものですね」


「ああ、話によると王位簒奪レースってのに参加してたときに、全ての船が撃墜されたのが原因だと怒っていたな」


「それは大変で――――――あれ……どこかで聞いた話な気が……?」


「あれがこの船の艦長をしてる女の子だ。性格は高飛車だが腕は確かで乗り組員からも姉御と呼ばれて慕われてるな」

 私は、コルクの指先を見ると彼女もこちらに気がついたのか近づいてくる。そして私に気がついたのかその表情を青くしていく。


「お、お前は……カイジン・クサナギ!どうしてこんなところに!?」


「えーと」

 それは私のセリフでもあるんだけど、どうして彼女がここにいるのだろう。


 とりあえず一言挨拶はしておいたほうがいいよね?


「お久しぶりですね、えーと衛星都市スメラギの元ルグニカ王女のエメラス様?」

 そう彼女こそ、私が海洋国家ルグニカで始めてあった時、海賊だと思っていた女の子エメラスであった。




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