最終章

第324話

「ユウティーシア、気になっていることがある」

 クラウス殿下は、真剣な表情で私を見てきた。


「草薙と言う者が全ての物語の始まりの基点と言うのは納得ができない。そんなに君の知識の中の草薙と言う人物は世界の理に干渉できるほどの者だったのか?」

 私は、クラウス殿下が何を言いたいのか一瞬分からなかった。教授や草薙自身がそう言っていた。世界の理と正すためにエアリアルブレードとループオブロッドを使えと。


「それと……これは後で聞くとしよう。どうせ、レオナと言う者を助けにいくのだろう?」

 クラウス殿下の言葉に私は頷いた。


「駄目です。もう少し体を休めないと……」


「エレンシア、ティアも全てが終わったら帰ってくると言っているのだ。それに体の方もどこにも怪我の後など見られないだろう?」

 お母様がとても心配した表情で私の身を案じてきてくれている、それをお父様が宥めているが……。


「そうですけども、ティアから手を離したらもう戻ってこないように感じるのです」


「……」

 やっぱり親だからなのか、私が醸し出している雰囲気から察してしまっているのか。

 でも、本来の史実どおりの歴史になれば、本来のユウティーシアが戻ってくる、だからお母様は何も心配しなくていいと思う。


 私はベットから立ち上がる。


 すでに体は死んでいるから感覚をまったく感じないし寒いとも熱いとも思わない。体中の運動中枢を司る神経を無理やり音素で動かしてるだけに過ぎない。


「クラウス殿下、魔法帝国ジールは行かれたことはありますか?」


「ああ、あるが……」


「そうですか、そこにレオナとエンハスは居ます。彼らは古代遺跡から別の惑星に移動しようと考えてるはずです」

 私の神格エネルギーを奪ったという事は、神格エネルギーを利用して作っていた細胞分裂などのデーターなども内包されているはず。

 メディデータには細胞分裂がない。それを全て精神エネルギーで代用してるため、人間とは定義されておらず古代遺跡も彼らに道を作りことはしない。

 でも神格エネルギーを持っていれば人として認識される可能性が非常に高い。そうすれば魔法帝国ジールに存在する軍事開発実験センターからの転移装置で月まで移動することも可能になる。

 

 すでにこの世界に存在する環境開発実験センター、宇宙開発実験センターの動力は私が人として認識された時点で起動しているのだ。

 軍事開発実験センターの動力が起動すれば月までのバイパスが出来てしまう。

 それを止めないと今度は、宇宙規模の厄災が起きる。


「そうか、分かった。シュトロハイム夫妻、ユウティーシア嬢は俺が必ず守りますので任せて貰えますか?」

 お父様もお母様も私の話を聞いて、クラウス殿下の言葉を受けてどう答えを出していいか迷っているようだった。


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