第309話
「普通の方は南門は通れるのですか?」
「それは無理です。行商人の方や行政関係の者になります」
そうするとバズーは通れない事になるな。
まずはバズーが帰ってきてから情報を一度整理することにしよう。
領主ズールの部下でもあり城塞都市ハントの守備隊長であるイスカが一礼してテントから出た後、数時間に渡って治療をしてると、バズーの父親であるバルスさんがテントに入ってきた。
「聖女様、こちらにバズーは居ますか?」
「そういえば、まだ来られてないです……ね!?」
返答をしてる途中で俺は立ち上がる、何を数時間何も考えずに治療をしていた?テントの外を出て空を見上げるとすでに夕刻に差し掛かろうとしている。テントの外には何故か誰もいない、先ほどまで喧騒が聞こえていたのに出た瞬間、世界から音が消えていた。
そんな無音の世界で音が生まれた。振り返るとそこには紫色の長髪を後ろで束ねたレオナと、見たことがない白銀の髪を長く伸ばしてる女性が立っていた。
「ユウティーシア様」
レオナは俺を、ユウティーシアと呼んだ。
「―――レオナ?」
「はい、何でしょうか?ユウティーシア様」
そう言いながら俺にレオナが近づいてくる。どこかいつもと様子が違う……。そんなレオナが腰からブロードソードを抜く。
「レオナ、いつもと町の様子が違うのです。貴女なら分かりますよね?」
俺の言葉にレオナは無表情で答えず近づいてくる。
「申し訳ありません、クサナギ殿」
レオナの握っていたブロードソードが、
「え……どういうこと……です……」
俺の胸元に差し込まれていた。剣先から滴り落ちる血がレオナが持つ刃を伝い地面に零れ落ちていく。
力が急速に抜けていき魔力がまったく使えない。体が言う事をきかない。
レオナをみるとその表情は……。
喉奥から血が沸きあがってきて口元から血が溢れる。
息が出来なくなり意識が朦朧とし始める。
そこでようやくレオナと一緒にいた金髪の女性が言葉を発した。
「アウラストウルスの証明、貴女には失望したわ。せっかく手塩をかけて作ったのに人間みたいな低俗な感情を持つなんて、人形は人形らしく居ればいいのに。レオナ、この役立たずのゴミから神核を引き抜きなさい」
レオナがゆっくりと近づいてくる。もう目を開けてられてない……ただ、冷たい刃が俺の体に突き立ったのだけは何故か分かった。
「聖女様!聖女様!」
うっすらと目を明けると、そこには俺を心配そうに見てきてるバズーやバルス一家や町の皆が居た。体にまったく力が入らない。それよりも魔力がまったく感じられない。いったいどうなって……。
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