第304話

「大丈夫、私はリメイラールの聖女だからね。だから一度見てあげるよ?」

 そう言うとシータが満面な笑みを見せてきた。

 まぁ子供の笑顔は宝だからな。

 きっと説明すればレオナだって分かってくれるといいなー。


 食事を取った後、俺は冒険者の服装のままシータの友達の家に向かったが場所はさらに北門に近い。おかげで治安もあまり良いとは思えないが護衛としてバズーがついてきたのだが、役に立つのだろうか?


「お姉ちゃんここ!」

 俺は連れて来られて到着した建物を見るがその建物は、バルスさんの自宅と同じくらい立派な物であった。壁を見るとどうもコンクリートらしくもしかしたら神代時代の建物をそのまま利用してるのかもしれない。

 横ではアルネちゃーんと叫んでるシータが居る。しばらくしてからあまり体調が良いとは思えない女性が出てきた。


「シータちゃん……」

 とだけ言って女性は泣き崩れた。

 あれ?アルネちゃんは?とシータは聞いているが女性は中々返答を返さない。


「すいません、教会関係者の治療師ですがすぐに容態を見せてもらってもいいですか?お金は取りませんので安心してください」

 俺の言葉にようやく女性は反応しすぐに家に上げてくれた。そして見た光景は……。


「――――――ひどい」

 体の四肢から壊死が始まっている、しかも大人であるアルネの父親は皮膚がまだ変色してるだけで済んでいるが子供の方は普通なら手遅れだ。


「せめて子供にリメイラール教会の方から聖言だけでも頂ければ……」

 聖言、それは死者を埋葬し浄化する儀式の言葉らしいがそこには特になんの効果もない。日本で言うところのお経みたいなものだ。


「すいませんが、聖女は何をしているのですか?」


「私達のような高額の治療費を払えない者を見てはくれません」

 冗談だろう?聖女を名乗ってるんだからやることやっておけよ。俺とかいつもいつも大変なんだぞ!

 俺はアイテムボックスから杖を取り出すとヒールを唱える。魔術式は最適な魔術式に組み変わり一瞬でアルネの体を壊死していた部分を含めて修復し回復させた。アルネの父親のリンガスの体も健康状態まで回復させるとアイテムボックスに杖を入れてその場で溜息をついた。


「もう大丈夫です。一応、栄養価の高い物を食べさせて……これをどうぞ」

 俺はアイテムボックスから金貨1枚で購入した石鹸を2個取り出して渡した。家の中を一瞥しただけで栄養価の高い物を食べさせられる程、家計に余裕があるとは思えなかったのだ。


「これは……?」

 石鹸を受け取ったシータのお母さんであるキルネは渡された物を見て俺を顔を見てきた。


「それは石鹸といいます。商店に売って栄養価の高い物でも旦那さんと子供さんに食べさせてあげてください。それと病気は完治させましたが少し詳しいお話をお伺いしてもいいですか?どうしてこのような病気になったのか調べたいと思います」

 俺の言葉を聴いてバズーとシータが尊敬な眼差しで俺を見ているがこれは俺の自己満足だ。

 ただ、この現状を見せられて何もしないのは人として駄目だと思っただけに過ぎない。

 

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