第305話

「はぁ……」


「お姉ちゃん?」

 心配そうに語りかけてきたシータの頭を撫でながら俺も甘くなったものだなと心の中で毒づいた。日本で生活してた時は、他人なんてどうでもいいと思っていたのにな……。

 

「大丈夫です。それでは情報収集をしたいと思いますのでシータちゃんとバズーも手伝ってもらえますか?」

 俺の言葉にシータとバズーと何故か感謝の言葉を何度も言っていたキルネさんまでも力強く頷いてくれた。


 


 まずやらないといけない事は、病に苦しんでる人の治療と同時に疫病の原因となっている問題を見つけ出さないといけない。俺は、キスカさんにお願いして部屋の一室を借りて白を基調とした服装に着替える。これは、アルゴ公国を経つ際にレオナから渡されていた物だが、まさか着ることになるとは思わなかった。

 聖女アリアが着ていたのと同じ服装を着て杖をアイテムボックスから取り出して首元に、ユウティーシア・フォン・シュトロハイムと書かれた教皇アリアが発行した聖女認定書をつける。

 この服装にしたのは、偽者の聖女が領主と結託してる可能性があるからだ。

 だが、相手も大陸全土に影響力がある教会と直接面倒を起こそうとは思わないはず、だから俺はこの服装で戦う。


「お待たせしました。それでは、まずは市場中央広場で簡易の治療所を作りましょう」

 部屋を出て、話しかけると俺を聖女だと知らなかったキスカさんや、本物の聖女だと確信していなかったバズーなどが驚いていた。


「キスカさんは、夫のリンガスさんと娘のアンネさんの様子を見ておいてください。バズーは、ここのホテルにいるレオナを市場広場に呼んできてください」


「お姉ちゃん、私は?」

 シータが聞いてくるが


「シータさんは、ご自宅に戻ってお父さんやお母さんに治療院を手伝ってもらえる方がいないかどうか聞いてみてください」


「わかった!」

 それだけシータは言うと家から出ていこうとしたのでバズーに家まで送るようにお願いをする。


「それで聖女様は?」

 二人がいなくなった後に、キスカが聞いてきたが俺は市場で簡易治療所を作ると説明すると教会では?と聞かれたので頭を振った。おそらく、領主が後ろ盾にいることから敵の拠点になってる恐れがある。そのような所に最初から行くわけにはいかない。


 俺がやらないといけないのは治療と疫病対策なのだ。結果的には、偽者の聖女や領主とゴタゴタになるかも知れないがそれは後でいい。それに市場広場で治療所を開設する目的は買い物客や商人により情報の拡散が早く済むからに他ならない。


 キスカの家から出ると、道中にいる人たちの体を片っ端から直していく。今回はリメイラールの加護とかは言わない。等しく直さないと後で必ず確執を生むし、何より前回のようにアリアみたく罪を着せる対象がいないのだ。

 歩きながら彼らの治療を施しているといつの間にか治療された人が俺の後をついてきていた。


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