第249話

「クサナギ殿」


後ろを振り返るとタオルも何も巻いてない裸のレオナがいた。レオナは年齢的に20歳半ばということもあり女性らしい体つきをしているのだが


「レオナ、いくら同姓しかいないと言っても布くらいは巻いて人前に出てください」


ため息を吐きながら俺はレオナに注意する。レオナはかなりの美人なのに無頓着な部分があるから困り者だ。


「レオナ、私も湯浴みをしてきますので出てきたら町へ探索にでかけましょう」




セイレーン連邦の国土の大半はステップ気候であり、沿岸に近づくにつれ砂漠が広がっていく。その為にアルゴ公国からヘルバルド国へ入った後、温度の上昇と沿岸部から吹き寄せる砂が混じった風で俺の髪の毛と体は大変に汚れていた。


生活魔法でバスルームの天井すれすれに水を生み出し、その中に種火の生活魔法を作り出す。それにより水を温め、適温にしてシャワーとして体と髪の毛を洗っていた。


「シャンプーかリンスがほしい。叶わないなら石鹸だけでも……」


俺は今、とても切実な問題に直面していた。俺の髪の毛はかなり伸びており腰よりも長く手入れがメンドクサイのだ。バッサリ切ろうとも思ったが、かなり前にアプリコット先生に女の魔力は髪の毛に宿るのですと言う話を聞いてから枝毛だけ切るようにしていたがさすがにここまで伸びると管理が大変なのだ。


「はぁ……」


溜息をつきながら俺はミトコンドリアに命じて髪の毛の細胞修復を行う。それだけで生まれたての赤ん坊のような髪質になる。ただ以前は、ステータスが視れてた時にこの髪質保持の為の魔力消費みたら魔力が5億ほど減ってた事から魔力の消費がやばい。


たしかに髪の毛に魔力が宿ると言ったアプリコット先生の話はあながち間違いでは無いかも知れない。俺の場合は消費してるけど……。


本当に地球のシャンプーとリンスはすごいな。俺にはそっち方面の知識がないからどうにもならないのが困りものだ。


12歳とは思えない均整の取れた体をシャワーで洗っていき余分な肉がないか確認するが特には問題はなさそうだ。体をタオルで拭くと同時に種火と送風の生活魔法で髪の毛を乾かしていき最後に香油を髪の毛に塗って香を立たせてバスルームを出た。


バスルームは寝室に面していて、バスルームのドアから寝室を見て誰もいない事を確認する。そして寝室に入り、下着をつけた後に古代ギリシア時代の服装に近いキトンを纏っていく。セイレーン連邦ではこの服装が一般的な女性の服装らしく市場を調査するならあまり目立たないほうがいいだろう。最後に髪の毛を赤いリボンで後ろにまとめて完成だ。


寝室から出るとリビングには騎士風の軽装な服装をしたレオナが腰のロングソードの手入れをしていたが、町中で彼女は何と戦闘するつもりなのだろうか。レオナのステータスとか完全に人外の領域なんだがあまり周りに威圧を与えるような事をすると事件が舞い込んできそうで困る。


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