第226話
そして普段から医療という命を盾に取って私利私欲を貪ってきた人間に対して人は好意を絶対に抱かない。逆に無意識下でもマイナス感情を抱いてしまう。そしてそれが表面化された場合。
「「「「ここからでていけー」」」」
そう、こうなるのは必然なのだ。
「聖女アリア様、申し訳ありませんが王宮へは今回の事は報告させて頂きます。それと御身のためにあの神兵との戦いだけに集中した方がよろしいかと」
「くっ……」
聖女アリアが苦々しい表情で俺を睨めつけてきているがそれすらここでは教会と聖女アリアを貶めていることに気がついていないのだろう。
「ユウティーシア、貴様は……」
勇者コルクが最後の言葉を誰にも聞こえない程小さく殺すと言っていたがそれこそ俺の望む展開だ。どちらにしても座天使サマエルを倒すまでは俺の回復とステータス上昇魔法は必要不可欠。まだまだ時間はあるのだ。どうせならセイレーン連邦全ての国々にカイジン・クサナギの名を知らしめてやろう。
聖女アリアと勇者コルクは民衆の怒りの声に追い立てられるかのようにその場を後にし前線へと戻って行った。さて、あとの問題は教会がどう動くかだな……。
「勇者コルク殿と聖女アリア殿、かわいそうでしたね」
「―――え?ええ……そうですね」
もしかしたら彼女と彼には何か信念があって動いていたのかも知れない。ただ、どんな理由があろうとも俺に火の粉が降り注ぎ取り除けるなら取り除く。もし力が無いなら逃げればいいだけだ。それに聖女や勇者は自分達よりも立場の低い者を貶めるような発言を行っていた。それらこそが反感を招く事とは理解せずにだ。
「もしクサナギ殿が勇者コルク殿や聖女アリア殿のように民衆から同じようにされたらどうしますか?」
「……」
同じような事?そんな事は絶対に起きないし起こらない。俺は自分の立場や地位には絶対に固執しないし表面上の付き合いしかしないからだ。もし問題が起きるようだったらその前に身を引くしそう言った人達からは離れて一人で暮らす。それが俺の行き方であり決めた道なのだ。だから……。
「そうですね、もし同じような立場でしたらそうなる前に消えます」
「そ、それは!?」
どうせ世界は広いのだ。さっさと表面上だけの人間関係を構築し直して取り繕って生活をしたほうが遥かに楽で効率がいい。相手の心理的パーソナルスペースに入り込むようになるまで人間関係が深くなるのは喧嘩の元になる。そんなのはもう見たくないしそんな事に労力を費やすのももういい。
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