第212話

当たり前だ、コブシで語って相手が折れないんだから相手の得意分野で相手を叩きのめせば痛快だろう?しかも怪我人は座天使サマエルが量産してくれるのだ。俺はその怪我人を治療し続けるだけで名声が上がっていくという美味しい状況が今出来上がってるのだ。これを利用しないでいつ利用しろというのだ。


もし俺がある程度、民衆やリメイラール教会の上層部から有効利用できそうだと思われたら聖女は純潔が必須なのだから結婚しなくても良い事になるしアリアも聖女認定から外れるかも知れないじゃないか?だって回復などのヒールは俺の方が遥かに優れているのだから。


俺たちは、聖女アリアと勇者コルクが必死に前線で戦ってるのを見つつ人に見つからないようにコソコソと岩場を移動しながら後方に回り込む。そして前方を見るとかなりの兵士が怪我をしたまま動けない状態のようだ。どうやら死んではいないようだが、応急手当だけして運んできたのだろう。


「ほら、レオナそっちの支柱を支えててください」


俺はせっせと木材の支柱を地面に打ち込んでいく。戦闘に掛かりきりな兵士たちはこっちに気がついたようだが注意をするそぶりは見られない。きっと騎士風なレオナと冒険者風の俺の姿を見て戦闘に必要なことをしてるのだろうと思っているくらいだろう。


20本近い支柱を立て終わった後は、テントを張っていく。全て身体強化を使ったまま行ってることからさくさくと物事は進んでいく。支柱部分にはテントの切れ端で作った布でテント部分を縫い合わせて固定していく。


「ふう、できました」


「クサナギ様、これは一体何なのですか?」


テントには、『本家本元!リメイラール教聖女カイジン・クサナギ治療所』と書かれており最後に立て看板も設置するそこにももちろん『本家本元!リメイラール教聖女カイジン・クサナギ治療所』と書いて治療費はアナタの信仰に応じて回復させて頂きます。と書いた。


もちろん無料。


「ふふふ、これは私のイメージ戦略の一歩です!」


「クサナギ殿のイメージですか?」


俺の言葉にレオナはこいつ何言ってるんだろうと言う目で見てきた。




テントの中でボーっと待つこと30分ほどしてようやく患者が運ばれてきた。どうやらリメイラール教会所属の治療魔法師の魔力が尽きてきたのだろう。


予想では10分くらいで来ると思ってただけにかなり頑張ったと思う。


「冒険者と騎士だけなのか?」


俺とレオナを見たアルゴ公国の騎士団と思われる男性は落胆した表情を見せていた。まぁなにせ治療所と書いてあって入ってきたら治療師の服装をしてないのだ。たぶん薬師とかポーションを持ってきたとか思ったんだろうな。きちんと聖女カイジン・クサナギって書いてあったのにきちんと文字は読んで欲しいものだ。


「いえ、私が治療できます」


長年の営業で鍛えられた作り笑いで男性の騎士にニコリと微笑む。


「そ……そうか。ヒールだけでもいい。止血をお願いできないか?」


「はい!お任せください」

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