第211話
「クサナギ殿は、もう少し恥じらいを持ったほうがいいのではないのですか?」
「そんな物より実を取ります」
今の俺の姿は、ドレス姿ではなく海洋国家ルグニカの衛星都市エルノの迷宮に潜った時のように冒険者の服装をしている。
「ふむ、こんなものでいいですか?」
その場でくるくる回り確認する。腰まで伸ばされた黒く長い髪はまとめずにそのまま背中に流すようにする。
「よし、完璧ですね!」
「はい、黙ってればすごい美少女の冒険者に見えます」
「……」
レオナの言葉に俺は突っ込むのをやめた。美少女とあまり男の精神状態で言われるのも衛生的によろしくないことを今思ったがそれはそれこれはそれを割り切ろう。
次にテントや支柱などをアイテムボックスから取り出していく。
「クサナギ殿は何をしたいのですか?」
「ふふふ、それは見てからのお楽しみです」
俺は取り出したテントをアイテムボックスから取り出したナイフで切り裂いて、ソーイングセットを使ってせっせと糸を通して編み合わせていく。一人暮らし暦30年以上=主婦暦30年以上の俺の家事スキルはとても高いのだ。木材の支柱に会うようにいくつものテントの布地を切り分けては針と糸で縫い合わせていき1時間ほどで想像どおりの大きなテントが出来た。
岩場からチラッと戦闘状況を見る。アルゴ公国騎士団と教会の騎士団は連携をとって戦っているようだが回復役のMPが尽きかけてるのかかなり旗色は悪そうだ。これは早めにしないといけないな。
おれはすぐに岩場に引っ込んでテントの布地の部分にデカデカと『本家本元!リメイラール教聖女カイジン・クサナギ治療所』と書いていく。
「クサナギ殿、この本家と言うのは?」
「大丈夫です、気にしないでください。これは言葉のあやというやつです」
くくくっ。回復治療がメインで権力を握ってるというならその屋形骨ごと圧し折ってこっちの回復がすげーと言う所を見せ付ければ民衆なんて手の平クルーになるはず。何せ、俺のは魔術でなくその上位の魔法なのだ。どんな怪我も一瞬で治しちゃう!悔しいけど回復してほしい!と言う人が次から次へと座天使サマエル君の攻撃により運ばれてくるのだ。
しかも聖女たちの魔法量には限りがあるが俺は実質無限状態、普段から治療魔法師を独占しておいて肝心なときに回復出来なかったら支持率は下がるだろう。そこに俺みたいな超絶美少女が冒険者の格好をして危険な戦場まで自分の身を省みずに回復に来てたら、そりゃ民衆の支持率はうなぎのぼりになるはず。
しかも自分で聖女まで書いてるからな。本物の聖女アリアとか怒り狂うに違いない。しかもアリアは回復が出来ないのに俺は回復が出来ちゃう。民衆がどっちを本当の聖女と思うか考えただけでも楽しそうだ。
「さて、レオナ。移動しますよ」
「は、はぁ?クサナギ殿、さっきまでと違って生き生きしてますね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます