第196話

よく見ると一昔前のSFで出てくるようなずんぐりむっくりなロボットであった。俺はそれを見て意識を失った。


――馬鹿じゃないの?


俺はその言葉に意識を取り戻した。そこはやはり何もない真っ白な空間で……。目の前には燃えるような赤い髪をしたユウティーシアそっくりの女性が立っていた。


「そうか、思考が出来るってことはまだ生きてるって事か?」


俺の言葉に、目の前の精神の調停者は呆れるかのような表情を見せてくる。そして語りかけてくる。


「私が世界の事象から貴方を守ってるって言ってもそれは万能じゃないの。それを細胞変質させて存在自体を変質させたものだから貴方の体は細胞崩壊を始めているわ」


「そうか……」


細胞分裂の限界まで振り絞ったのだ。そのくらいの覚悟は出来ている。


「つまりこれで最後ってことか?」


「いいえ、幸い草薙の肉体は神代遺跡のメディカルマシーンが修復してくれてるわ。でも一度変質した肉体再生までは無理みたい」


「そうか……」


そういえばこいつに聞きたい事があったんだ。


「そういえば、お前は俺に作られたはずなのに何故、そんなに多くの事を知っているんだ?」


俺は疑問に思っていたことを聞く。そう俺が作ったのなら俺が知らない事は彼女は知らないはずなのだ。なのに何故、俺が知らない事まで知ってるのかそこが疑問だった。


「決まってるわよ、アナタは――――――の――――――なのだから。私の知識は本来の――――――の者からだから」


「ん?一部が不鮮明で聞き取れないぞ?」


「ごめんなさいね。―――は言えないみたい」


言えないというか俺が聞こえないだけか?つまりもしかしたら!?


「転生の時に俺だけが若返った事と何か関係があるのか?」


俺の言葉に調停者は驚いた顔を見せた。つまり俺が60歳近くで元のクラスメイトと同じ場所で眼を覚まし若返っていた?違う、あれは時を越えた?事には意味があるという事になる。


「一つ聞かせろ、お前はどこまで把握している?」


俺の言葉に調停者は何も答えない。つまり、そういうことだ。俺が知らない事の全てを調停者は知っている。それは矛盾すると共にヒントだ。


「そろそろ時間みたいね。あまり無理な力は使わない方がいいわよ?とくに今回の力の使い方で貴方はこの世界では唯一の人間になってしまったのだから」


俺はその言葉を聞きながら自らの意識が浮上するのを感じ取った。


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