第188話
アウラウストルスの証明と言う言葉に草薙は、眉を潜める。そのような言葉など聞いたことがないからだ。そして精神の調停者と言う自分自身が発した言葉の意味を考えていく。
精神つまり心の病に関して人の心は正と負どちらかに偏る事で病を発祥する。正に触れすぎても自尊心が強くなりすぎる。そして負に触れればそれは初期の段階ではうつ病、最悪死に繋がる。
そして精神、心を均等に保つことを天秤の維持と呼んでいる。
「やっぱり全てを思い出してはいないのね?」
ユウティーシアの姿をした少女は俺へ視線を向けてくる。全てを思い出す?何をだ?
「知らないな。だが、最近の記憶の混濁は全てお前の仕業か?」
「違うわ。だって私にはそんな力はないもの。あなたの記憶の混濁は、神衣を使ったからよ」
「神衣を?」
「そう、そのおかげで私も草薙と話すことができたのだから悪いことばかりではないわ。でも問題は、アリアと言ったかしら?史実を詠むあのリールスティグマは厄介よね」
「なぜ、神衣を使うと記憶の混濁が起きるんだ?」
「もう、せっかちな人は嫌われるわよ?えーとそうね。記憶の混濁が起きる原因は、貴方自身にあるの。だって、レオナが貴方の記憶を読みとれたのに貴方は彼女の記憶を見ることができた?」
そう言われれば、俺はレオナにユウティーシアとして生まれてきた記憶を見られた。だが、俺はレオナの記憶を見ることができなかった。
「いや……」
「ふふ、つまりね。貴方は人のためと言いながら人を拒絶してるの。だから世界の事象の方が貴方自身に興味を持った。だから貴方は自身の知らない事をユウティーシアの精神を介して知ってるの。ただそれだけ」
つまり俺の記憶の混濁は俺自身の問題だということなのか?だが……。
「人が人を拒絶するなんて当たり前だろう?誰彼かまわずに受け入れていたら何れ破綻する。キャパシティには限度があるんだ」
「そうね、でも貴方は絶対にそれをしないし許容もしない。だから私が生まれたのだから……でもいいわ。しばらくは私が貴方を記憶の混濁から守ってあげる。ユウティーシアもそれを望んでいるから問題ないと思うし」
少女が語りかけるのをやめると休息に世界が暗闇に閉ざされていく。そこで俺はようやく自分の意識が現実世界に戻ろうとしてるのを理解した。
「そう、言い忘れていたわ。セイレーン連邦の目的は……」
最後まで聞く前に俺は……。
気がつくとベットの上で俺は目を覚ましていた。今まで頭の中で霞がかかっていたような重苦しい感じが一切消えていた。
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