第183話

なんだよ、俺と触れてるだけで最大魔力量が増え続けるってチートだろ。俺の能力もチートだが上限が存在する。その上限が無い状態で増え続けるっておかしいだろ。ああ、そういうことか?


「クラウス殿下、申し訳ありません。私はクラウス殿下と一緒に行く訳にはいきません。私一人だけのために多くの民、罪も無い方々を戦火に巻き込むのは為政者として王族として間違っていると考えております」


俺はクラウス殿下の手を振りほどいて立ち上がると距離を取る。クラウス殿下は拒否されるとは思っていなかったのだろう。最初は呆然としていたが俺が断った事を理解すると剣呑な表情を見せてくる。


「何故だ?私は、ユウティーシアの事をこれほど愛していると言うのに何故わかってくれないのだ?」


違う、クラウス殿下が欲しがってるのは魔法帝国ジールと同じく俺の魔力だ。俺に触れてるだけで最大魔力量が上がり続けるならどんな事をしても俺を欲しがるは当然だ。父上?国王陛下が教会の?そんなのは全て口実に過ぎないに決まっている。心がとてもざわつく。


「私がここに来た転移魔法だって君が私を求めて初めて発動する魔術なんだぞ?君は無意識でも私を求めてくれたのだろう?」


顔がカッと赤くなる。なんて魔術を使ったん……それより俺が?殿下を求めてる?そんな事あるわけないのに……。


「出ていってください」


震える声で殿下へ伝える。殿下は、慌てて私(・)に手を差し伸べてきたけど私はその手を払いのけた。


「お願いします。一人にしてください、怖いのです」


うまく考えが纏められない、自分の立ち位置が分からない。どうしてここに私はいるの?どうして?


「お願いします。一人にしてください」




気がつけば俺は、部屋の中で座り込んだまま涙を零していた。何が起きたのか分からない、一瞬自分が自分ではない感情が湧き上がってきてその後の記憶が無かった。ああ、そろそろ聖女からの使者が来る頃だ。俺は沸きあがってきた記憶に疑問を抱かずにテラスに出る。そこには丁度、テラスに上がってきた侵入者が居た。


「夜遅くの訪問申し訳ありませ「セイレーン連邦アルゴ公国リメイラール教会本部の勇者コルク・ザルトですね?」」


俺は彼の名前と出自をそのまま伝える。


「どうして?それを……」


「いまは時間がありません。セイレーン連邦の方が私を浚ったと言う事にすればどこの国も被害は受けないでしょう」


名前を言い当てられた男はかなり動揺しているようだが、俺にとっては知ってる事であり?え?どうして……?


「分かりました。それでは移動します」


男は腰から神代時代の技術結晶である次元移動兵器を引き抜く。


「エアリアルブレード!」


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