第181話

「いえいえ良いのですよ。よい家臣をお持ちではありませんか?ユウティーシア様を守る騎士として同行させると宜しいでしょう。それと、私の事はエクアドルと呼び捨てにしてもらって構いませんよ?将来、私が貴女様に仕えるのですから」


「分かりました」


「では用意もあると思いますので、このへんで話し合いは切り上げましょう。ユウティーシア様も嫁ぐのに色々と準備がおありでしょうしね」


エクアドルのその言葉に、会議は終わりを見た。

そして放心して座ってる俺を他所にグランカスの部下達がエクアドル達をおそらく総督府内の客室へと連れていくのだろう。案内してる姿が視界の端に見えた。


そしてそれからしばらくして俺も自分の部屋に帰ってきていた。明日、ルグニカを発つと急遽決まったこともあり本来は、すぐに行う必要の無かった作業を今している。


衛星都市エルノの迷宮に行く前に、寸法を測っていたドレスを着て調整しているのだ。まさか顔合わせのつもりが本当に王妃扱いになるなんて想像もしていなかった。しかもこんな一方的な脅しを含ませて婚姻を推し進めてくるなんてあまりと言えばあんまりだ。これなら気遣いを見せてくれていたクラウス殿下と結婚していた方がずっとマシだった。


「クサナギ殿、どうしますか?」


ドレスの最終的調整を針子さんにしてもらってる俺にレオナが言葉をつむいでくるが


「レオナ、もういいのです。貴女も明日、私と魔法帝国まで同行するのですから用意をしておいてください」


俺の言葉にレオナは部屋から出ていきしばらくしてから針子さんもドレスの調整が終わり退室していった。入れ替わるように給仕係りの人が入室してきていくつかのパンケーキと紅茶を入れて部屋を出ていった。

今は、何も食べる気がおきない。きっとエクアドルが予定を繰り上げて俺を魔法帝国へ連れていこうとしてるのは不足な事態を減らそうと言うのだろう。俺自身には逃亡や戦うと言う手段が取れないしな……。

今頃は、リースノット王国でクラウス殿下とアリス皇女殿下はうまくやっているのだろうか?


「クラウス殿下……」


「呼んだかい?」


後ろから声が聞こえてくる。振り返るとそこには端整な顔立ちをしたクラウス殿下がいた。でも、どうしてこんなところに?


「クラウス殿下、何故ここに?」


俺の疑問にクラウス殿下はやさしく微笑むと耳元で囁いてきた。


「君に会うためだよ、本当に手を尽くしたんだ。父上からは教会が動いてるから駄目だと言われたけどね。そんな事は関係ない、僕は僕のユウティーシアを誰にも渡すつもりはないからね。君の情報が得られてすぐに転移魔法を使ったんだよ。」


「え……でも……」


顔が真っ赤になっていくのをとめられない。耳元で囁かれるのはこんなにすごい威力を持っているなんて知らない。


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