第127話

「さて、皆様。私のこの状態を見てどう思われますか?」


どう思われますかだと?理解できないに決まっている。。こんなことはありえない。こいつは一体何者なんだと?頭が理解することを拒む。


「ご理解頂けたようですね?」


そう言って少女は奴隷の枷を全て俺たちの目の前で破壊してしまった。

思わず俺は椅子から転がり落ちた。ありえない、ありえない、あれば魔法帝国ジールで作られた物で破壊は愚か欠ける事すらないというのに跡形もなく消し去った。

気丈な奴隷商人の一人が椅子の足を無詠唱魔法で切断されて床に倒れていたが大半の奴隷商人はこの得体の知れない少女に恐怖を感じていた。


そしてクサナギと言う少女は告げてきた。

これ以上奴隷商人を続けるなら殺しますよ?と、俺たちはグランカスへ視線を向けたがグランカスもクサナギに視線を向けていた。そして悟った。

グランカスはクサナギにすでに屈しているんだなと……。


だが俺たちにも生活がある以上、折れるわけにはいかない。


そんなクサナギが俺たちに2番目の選択肢を突きつけてきた。

それは、歴史に名前を残すという物であった。

一瞬、こいつは何を言ってるんだろうと思ったが歴史に名前を残す、偉人としてと言われると男としてはとりあえず話しを最後まで聞いてみようと思った。


そしてクサナギは俺たちに奴隷よりもさらに稼げる道を示してきた。

それは今まで考えた事もない物だった。

派遣法というものらしく、人材管理をしてるだけでお金になるらしい。

こんな稼ぎがいい物があるのかと目からうろこだった。

奴隷を購入して管理して躾けをして売るより遥かに儲かる。しかも永続的に中抜きが出来るとなれば誰も反対するはずがない。


そしてクサナギは、効率よく人材を獲得し運用するためには学び舎を作る必要もあると言ってきた。全員が何故かと首を傾げていたがクサナギは俺たちに説明した。

宝石でも加工しなければ高くは売れない。

人間も同じで必要最低限の教養である文字の読み書きから計算までを学び舎で教えればどこへでも派遣できると、つまり人間の品質を高める事こそ派遣法をよりよく活用できる方法を諭してきたのだ。


今までそのようなことは考えたことはなかった。

グランカスですら驚きながらクサナギを見ていた。


そして最後に極めつけはそのような体勢を押し通すためにクサナギ自らが簒奪レースに参加し王となると公言したのだ。震えた、会議室は誰もが自分たちが未来の総督府の地位になること、そして国を導く存在になるかも知れないという野望に燃えた。


それからは、グランカスも俺たち奴隷商人も私財を投げ打ってガレー船を修理し一ヶ月の航海に耐えられるようにした。そして、俺たちが総督府になったときに反発が起きないように他の町の酒場で噂を流した。

海神クサナギが、民を弾圧する王家を倒すために降臨したと。

これはクサナギがプロパガンダと言う手法と言っていた。

俺たち自身の名前で広めろと言っていたが、見目麗しい少女の方が神秘性が出るだろうとクサナギには内緒で広めた。


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