第一章 幕間 アリスの貴族としての矜持
第68話
煌びやかに細部まで装飾を施された迎賓館の一室で夜会は行われていた。
多くの着飾った老若男女が会談し王家専属の音楽隊が多種多様な音楽を奏でる。
そして数多の高級料理がテーブルの上で飾られ場を引き立てる。
その様子は、ここ数年で急速に国力を高めつつあるリースノット王家主催の夜会に相応しい物であった。
どの料理を取っても一皿、銀貨どころか金貨数枚の値打ちがあるものだろう。
先ほども、肉を一切れ食べてみたが香辛料がふんだんに使われており味付けも濃く素材も最上級物を使ってるのからなのか素晴らしい物であった。
これは良い物ですと口の中の物を租借しながら話しかけて来たユリアに飲み込んでから話しなさいと注意した。
「あの、これは何のお肉なのですか?」
ユリアは、料理を運んできている一人のメイドに話かけている姿を見て私は、ユリアがこんなに料理に情熱を向ける切っ掛けを思い起こした。
元々、ユリアは私のお母様の傍付きのメイドだったけど何故かお母様との距離感がメイドという感じではなかった。
お母様は、お父様の側室だったけど正妻には疎まれていてあまり待遇は良いとは言えなかった。そんなある日、お母様は亡くなられた。
原因はいまだに不明。ただ当時の状況を洗っていくとお母様が亡くなられた後、王都ヴァルキリアスの中央を流れるライン川の畔で一人の男性の遺体が発見された。
その遺体を調べたところ、王宮料理人の一人でお母様の料理を作った者であると判明した。そのことで毒殺の疑いが濃厚となった。
当時、お母様の料理の配膳をしていたのはユリアだった。そのため、嫌疑はユリアに向けられたけどお母様が亡くなられてから後ろ盾を無くした私を始末しようとしてきた襲撃者から一緒に逃げていた事から可能性は低いとお父様はユリアの罪を不問としていた。そして私が、祖母の実家であるハーデス公爵家に匿ってもらってる間にお父様が、一連の事件を片付けた後にヴァルキリアスへ帰国しお父様から事件が起きた原因と顛末を聞いた。
お母様が毒殺された事を知らされた私は、食事がまったく喉が通らなくなり毎日毎日一人部屋の中で塞ぎこんでいた。何人ものメイドが私に食事を運んできてくれたが私はそれを口にする事は出来なかった。
そんなある日、アリス様と声をかけられた。私は、声がした方へ視線を向けるとそこには真新しいメイド服を着たユリアの姿があった。
ユリアはいつものように元気よく
「アリス様、これを食べて元気になってください」
と料理を差し出してきた。私はユリアが差し出してきた料理を見るとお世辞にも出来がいい物と思えない物だった。王宮料理人が作るような品が高い物ではなく平民が食べるスープのような物。飾り気も何もないし具材も不揃いに小さく切られていてとても皇女である私に出すようなものではなかった。
「大丈夫です、それは私が作った物です。だから私を信頼して食べてください」
「……」
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