第50話

「あら、よく分かったわね」


そりゃ分かると思ったが口にはしなかった。

それにしてもずいぶんと綺麗にまとめてある店内だと思う。

日本のスターバックスをオシャレにしたような物に近い。


「それじゃ住居は2Fになるからさっさと上がりましょう」


「はい」


階段を上がっていくと6歳くらいの2人の男の子と目があった。

その目はお姉ちゃんだれ?と言っている。


「初めまして、ユーヤと呼んでね。今日だけミランダさんのご厚意で泊まらせてもらう事になったからよろしくね」


このくらい砕けた言い方でいいはず。

子供たちはミランダさんの後ろに回り込むと俺を見て走りさっていった。


「ごめんなさいね、いつもはきちんと挨拶するんだけど」


「いえいえ、大丈夫です」


俺も小さい頃はあんな感じだったしな。

あまり気にしたらいけないと考えていたら先ほど、ミランダさんが数冊の本を差し出してきた。


「これはきっと貴女のよ?彼からのプレゼントかしらね?」


本を受け取り表紙を見ると魔術関連の本だった。

ユークリッドは俺との約束を守ってくれていた、それなのに俺は約束を守っていなかった。

俺が俯いているとミランダは、俺の腕を握るとリビングがある部屋まで引っ張って行く。

突然の事に驚いた俺は顔を上げるとミランダの表情は些か怒っているようだった。


リビングは、子供の洋服などが散らかっていてお世辞にも綺麗とは言えなかった。

まったくあの子たちはーとミランダは言っていたが怒ってるようには見えない。


「座って」


俺はミランダに促されるように椅子に座った。

さっきまでのと違ってやはりミランダは怒ってる。


「ねえ?私が何で怒ってるか分かる?」


俺は頭を左右に振るう。

分かる訳がない、いきなり怒り出す人間の心境など……。

いや、まずは相手を観察しすれば妥協線も取れるのではないか?

相手の瞳を見ようとするとミランダは呆れとも怒りともつかない表情を見せていた。


「そういうのやめなさいって言ったの!貴女、本当に自分の事が見えてるの?ずっと不思議に思ってた。


何であの子が、親に捨てられた子が貴女にあんなに短期間で惹かれたのか」


この人は何を言ってるんだ?

惹かれる?俺に?そんな事ある訳ないだろう?

俺にそんな資格がある訳がない。


「貴女とあの子は似てるから惹かれあったのよ、それはとても危険な事なの。分かる?」


分かるわけがない。

大体、俺とユークリッドが似てる?そんな事ありえない。

ユークリッドは、誰でも助けるようなお人好だ。


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