第45話

「雑巾で拭けば拭くほど汚れが取れるとか、ユークリッドは殆ど掃除してなかったみたい」

 しばらく雑巾がけをしてるとバケツの水が汚れてしまったので流し台に捨てる。

そして瓶を見ると水がほとんど残っていなかった。

 いつもはユークリッドが早朝に井戸まで水を取りにいっていたのだが、今日は朝のハプニングがあった事もありそれが出来ずにいた。

 そもそも、この時間帯はユークリッドは仕事場にいる事から水が必要だとは理解していなかったのだ。


「仕方ない」

 ユウティーシアは、動きやすい服装に着替えるとエプロンをつけて空になった瓶を持ち上げた。

 中身の水が入っていない事もあり何とか持ち上げる事が出来た。


「たしか近くに井戸があるって言ってた気が……」

 30分後、ユウティーシアは何度か道に迷いながらも井戸についていた。

 ユウティーシアは、井戸に近づくと井戸に設置されていた木のバケツを投げた後、縄を引っ張るのに邪魔な髪の髪をシニヨン風にまとめると両腕をまくった、

そしてバケツを持ち上げようとするが


「も……もちあがらない……」

 そう非力なユウティーシアには、縄を引っ張るほどの力がなかったのだ。

その後、繰り返し何度も何度も挑戦していたがとうとう夕方になってしまい途方に暮れてしまっていた。


「あらまぁずいぶんと若い奥さんだこと」

 座り込んでいたユウティーシアに一人の女性が声をかけてきた。


「どうしたの?ああ、そういうことね。重い物ね、少し待ってね」

 ユウティーシアの見てる前で女性は木のバケツを恐ろしい速さで引き上げた。


「それで御嬢さんの瓶はどれなの?」

 女性が周りを見渡したが瓶は自分のといつもユーク坊が持参してる瓶に似た文様のモノしかない。


「あ、これです」

 ユウティーシアが指差した瓶はユークリッドのモノであった。


「へー」

 女性はジロジロとユウティーシアを見た。


「あんた、名前は何て言うんだい?」

 ユウティーシアは、瓶に水を入れてくれた恩もありユーヤと名乗った。


「そう、ユーヤね。私はミランダ、近くで喫茶店を経営してるから良かったらきてね。でもその前にその成りじゃこれは持てないわよね?」

 ミランダの言葉にユウティーシアは頭を左右に振って瓶を持とうとしたがうんともすんとも言わない。

ここは諦めるしかないとユウティーシアは頷いた。


「そうそう、あんまり無理しないの、どうせユウ坊が水を汲んでおくのを忘れただけでしょ?」

 ミランダの言葉を聞き、昨日ユークリッドに迷惑をかけた光景が脳裏を横切る。


「違うんです。昨日、私がユークリッドに一杯疲れさせるような事をさせたのは悪いんです」


「えっと……ごちそうさま?」


「なんで、そうなるんですかー!」

 ミランダの言葉を理解して否定したユウティーシアの言葉は夕方の空に響き渡った。




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