第38話

「ご注文は何にしましょうか?」


二人の会話に割ってはいるように女性の店員が注文をとりにきた。


「……いい」


「え?」


女性の店員は、ユークリッドの言葉を聞き取ることができず、疑問を呈した。

ユークリッドは、金貨を1枚テーブルの上に置くと椅子から立ち上がった。


一瞬、ユウティーシアはユークリッドの行動を理解できなかった。

首を傾げながら愛くるしそうにどうしたの?と見ている。


「出るぞ、迷惑をかけたな。

それは迷惑料だ、とっておいてくれ」


そう言うとユウティーシアを抱き上げる。

店内からはブーイングが女性店員からは黄色い声が上がる。


「え?え?ユークリッドやめてください」


そこでようやくユウティーシアらしい声が聞けたのだが、ユークリッドは下ろすことはせずに店内からでた。


店内から出てユークリッドが、ユウティーシアに先ほどの食堂でのことを注意しようとするとすでにユウティーシアは目を閉じて眠っていた。


「なんなんだ、こいつは本当に……」


眠ってる姿も絵になり美しい。

それよりも疲れるだけであれだけ無防備になってしまう事に、ユークリッドはため息をついた。


通りでユウティーシアを抱きしめて立ってるだけでもほとんどの人間がユウティーシアに視線を向けているのだ。そんな状態に危機感を抱かないユウティーシアを異常だと感じ始めた。


ただ、ここに二人の間に相互があった。

元々、治安が世界一いい日本で男として暮らしてきたユウティーシアこと草薙にとってはこれはあくまで普通な感覚であり特別気にするようなものではないのだ。


疲れていない普段なら異世界という事と自分が女性として見られてる事を理解しているからこそそれなりの立ち振る舞いや危機回避をしているが疲れれると一瞬でそれが剥がれ落ちてしまう。


ユウティーシアが寝てしまった事で今日の散策はこれ以上無理だと思ったユークリッドは、市場を後にした。そして家に入るとそっと起こさないようにベットの上にその体を下ろした。


数時間後、ユウティーシアは目を覚ましてベットの上でゴロゴロしていた。

遊んでいたわけではない。


自分がいくら疲れて意識が低下していたとは言え、男に媚びを売ってまで店内に入ったことを後悔し身悶えているのだ。

心の中では、ばっかじゃねーのばっかじゃねーのと自分を責めている。


「起きたのか?」

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