第20話
「ああ、これは失礼しました」
クラウス殿下が馬車の中へ入ってくると俺を抱きかかえて馬車を降りていく。その様子を見ていた周囲の貴族の年頃若い女性達からは黄色い声が沸き上がるが、お姫様抱っこされてる俺としてはますます顔を真っ赤に染めていってしまう
「殿下、申し訳ありません。普段から……その……」
「分かっていますよ?ユウティーシア嬢は体がそんなに強くないと伺っていますから」
うーん、そんな設定聞いた事ないんだが。
それよりそこの騎士甲冑をつけた女性にエスコートしてもらいたい。
少しクラウス殿下には離れてほしい。
「アル、マルス」
「「はっ」」
クラウス殿下に呼ばれた2人の男性がこちらへ近づいてくる。
2人とも身長が180㎝近くあり150㎝付近の俺からしたら見上げるほどの巨漢であった。
「まだ、夜会までは時間があるな?」
「はい、ありますが……国王陛下が公爵令嬢とお会いしたいと申しておりましたが」
「却下だ!父上にユウティーシア嬢は体調が芳しくないので来客の間で休んでから直接夜会に参加すると伝えろ」
殿下の言葉に、わかりましたと騎士の方が頭を下げるとすぐに俺と殿下から離れていく。
「殿下、国王陛下様はきっと今日の夜会前に打ち合わせをしたいと思ってお出でなのですわ」
殿下に抱きかかえられてる事で密着し上目遣いになってしまう事はこの際、仕方ないと諦めよう。それよりもあまり勝手な振る舞いは貴族として相応しくなく出来るだけの事を荒立てたくない。恐らく、国王陛下には何かしらの話があって待っているのだろう。
「大丈夫だよ?私の愛おしいユウティーシア。私が話を聞いておくからゆっくりと部屋で休んで元気な姿を見せてくれればいいからね」
そんなセリフを吐きながら、殿下は夜会に向かう貴族とは反対方向へ歩いていく。
「殿下、大丈夫です。もう一人で歩けますわ」
「大丈夫だよ?」
俺の願いは聞き届けられなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます