第19話
「そういえば二人きりになるのは初めてですね?」
「ええ、そうですわね」
今まで対面に座っていたクラウス殿下が突然、立ち上がると俺の隣に座り直してきたことで馬車内はそんなに広くない事から俺と密着することとなる。
「クラウス様?」
俺が疑問符を投げかけた瞬間、クラウス殿下に引き寄せられた。
いかん、これは危険な兆候が!メーデ!メーデ!
「殿下、お待ちくださいませ。まだ式も挙げておりませんのにはしたないですわ」
強く拒絶しようとするが、思ったよりクラウス殿下の力が強い。おかしい、俺はかなりのステータスを持って転生したはずなのだが振りほどけない。
「大丈夫だ」
何が大丈夫か意味不明だ。まずは離れてほしい。
「今は、ユウティーシアと私しかいないからな?それに顔を真っ赤にして照れて震えてる君を見るのはまた違った気持ちを私に抱かせる」
「いえ、ですから未婚の女性とこのような事をするのは……」
クラウス殿下が俺にキスを迫ってきたところで、ガタンッと音を立てて馬車が止まった。すぐに外からクラウス様、ユウティーシア様と声が聞こえてきた。
チッとクラウス殿下が舌打ちしたような音が聞こえてきたが聞かなかった事にしよう。それにしても、16歳の男が取るような態度じゃないだろ。
外を見るとかなり立派な建物と言うかお城?が視界に映し出された。そして今馬車が止まったのは俺が暮らしてた公爵家の館よりも一回り小さい館であった。小さいと言っても部屋の数は数十は下らない規模なのは見て分かる。そして馬車の外を見ると、何人もの着飾った貴族達が見てとれた。
「ユウティーシア嬢、夜会の開催はこちらの建物で行われるのですよ」
俺が馬車の中から外を見ていたのに気が付いたのかクラウス殿下が説明をしてくれた。
「え、ええ」
俺はクラウス殿下から差し出された手を取って席から立ち上がろうとしたが腰に力が入らなかった。先ほど無理矢理、接吻をされそうになったことで恐怖を抱いたのか?さすがにこれはと顔を伏せてしまう。
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