最強のFラン冒険者

なつめ猫

第一章

第1話

どこか浮遊感を感じる中で俺はゆっくりと目を開けた。


「ここはどこだ?」

 周囲を見渡すが、見渡す限り白い空間が続いておりどこにいるかまったく分からない。夢かも知れないと思ったが四肢から神経を通して感じる感覚はこれが現実だと言い含めてくるようだ。


 自分が何故、今ここにいるか考える。たしか数日前から風邪を引きながらもマスクをつけて会社に出勤していた。期限が近づいてきていたマーケティングで使用する顧客用のデータベースを作成する為に数十万件にも及ぶ顧客情報を必至にパソコンに打ち込んでいた所で力尽きて、会社の部長から帰って休めと言われ帰宅してから風邪薬を飲んで寝たまでは覚えている。つまりその後の記憶がサッパリない。


「まいったな。どこだよ、ここ……」

 夢なら覚めてくれないと納期に間に合わないんだが。そこで、ようやく自分の体の異変に気が付いた。デスクワークが長く仕事のストレスで過食気味だった俺はお腹が出ていたはずなのに、今はすっきりとしたお腹になっている。しかも服装は、俺が高校時代に着ていた学生服のままだ。


「―――つまり、これはまさか巷で有名な異世界物と言う奴か?」

 その割には、神様も女神様もいないんだが俺には不要という事だろうか?美人の女神様とか居たら迷わず連れていくんだが。そんな下らない事を考えていると、突然周囲の景色が切り替わった。


―――何でも願いを一つ叶えてやろう


 突如、男の声が頭の中に響き渡る。周囲を見渡すと見慣れない白髪の男が、そこに居た。どうやら俺の異世界物は、男の人が主導で行うらしい。さよなら美人の女神様……。とにかく気を取り直そう、俺の体は見た所では16歳くらいまで若返っておりこのまま異世界転生とか異世界トリップしても問題なさそうだし。あとはチート的能力をもらったり現代知識を生かした知識チートで内政とかすればそこそこいい生活は出来るだろう。


 まぁ……これは未来とか現代世界の続きとか言ったら目も当てられないが過去に戻るくらいの特典があれば株を購入して小金持ちくらいにはなれるかも知れない。


「えーと、ここはどこですか?」

 俺の考えを遮るようにこの場にそぐわない女性の声は俺の鼓膜を震わせた。俺は声が聞こえた方向へ視線を向ける、するとそこには学生時代の同期が全員居た。どうやらこれはクラス毎、異世界転移する物語のタイプらしい。声を上げたのは長谷川さんというクラス委員長だったはず。何分、30年前の記憶なので合ってるか不安だったが長谷川さん大丈夫?などとクラスで同期だった女子が話しかけてる事から間違いではないようだ。


 ―――ここは君達の所で言う冥界の入口と言う場所だ。


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