第11話
「ほら、いたでしょっ!」
「……ミニマムバット、ですね。全集落周辺、それどころか迷宮にすら生息しない魔物なのですが……」
氷の檻に入れられたまま、幼女の手によって大人のエルフの顔前へと突きつけられる。手を触られたり、腕を触られたりとされていた間、動くことも出来ずにいた俺の種族をあてたエルフに驚いたが、下手に刺激するする訳にも行かず、動くことができなかった。
それにしても……ワンピース姿をした幼女の性別は女だろうが、それ以外の4名の性別が良く分からん。冒険者だからか全員が同じ様な服装をしている上に、全員が中性的で凹凸の無い体つきをしているのだ。
「……大人しいですね」
「ね、ね!飼っていい!?」
「駄目です」
「えー!!」
「今日はルナ様の位階を上げるために迷宮に来たのです。これも殺してください」
「─」
「ん?……まあい──」
「だってこの子、精霊さんも懐いてるよ?」
殺せと無機質な目線と共に言われた時に思わず声が出てしまったが、慌てて口を抑えながら、神頼みする。
こんな事になるならばもう少し遅れて転移してくるべきだったが……精霊さん?
俺という存在がいる以上、精霊という存在もいてもおかしくないだろうが……この幼女は精霊さんとやらが見えるのだろうか。
「なんか、ティリシア様の気配を感じるんだって!」
「廻帰神様の……?廻帰神様の気配が有るならば何者かの魂が宿っているのは間違いないですが……、あぁ、だからこんなに大人しいんですね」
「で、飼っていい!?」
「駄目です」
「えー」
氷の檻の中、上下に振り回されて身体を色々とぶつけながらもエルフの言った言葉を纏めていく。……要するに、あの『飛びたい』という受け答えをした時の相手がティリシア様とやらなのだろう。廻帰神……他にどんな神がいるのかは知らないが、名前的にその神様が転生をさせられるのは間違いない。
ただせめてもう少しまともな種族にして欲しかったとは思うが。
「なんでーっ!?」
「何者かの魂が宿っているのであれば下手な魔物より厄介です。奈落に住む下等種の魂が宿っている可能性もあるのですぐに始末するべきかと」
「やだっ!」
「まーまー、落ち着けって隊長。そもそも、下等種なら精霊に懐かれる訳無いだろ?」
「……それもそうですね」
「まあ……本人に直接聞けば良いわけだし、聞いてみようぜ。なあ、答えられるだろ?バットさんよ?」
殺すべきと言い続けるエルフの肩を掴み、諌めたエルフに少し感謝の気持ちを抱くもすぐに裏切られる。
「──、──!!」
こんな声でどう答えろと?
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