第9話

 魂樹が開放された。


 そんな良く分からないアナウンスを聞きながら、俺は少し困惑していた。今の状況はあまりにも都合が良すぎるのではないか?と思ってしまったのだ。

 たまたまボス部屋に辿り着き、たまたま討伐に成功すると、たまたま日本語で書かれたスクロールがドロップし、それのおかげでたまたま魂樹が解放された。

 1個か2個であれば普通に納得できたかもしれないが、流石にそれは……特に、この良く分からない世界で日本語で書かれていたスクロールは納得がいかなかった。


 よくある、分からな言語が日本語に見える。というのでは無く、完全な日本語で書かれたスクロール。

 ソウルブックを開き、魂樹を見るとよくあるスキルツリーの様な物ではなく、立体的な種が浮かび上がってきた事が俺の困惑を肥大化させた。


 ツリー。ゲームに有るようなスキルツリーかと思えば、現れたのは立体的な種。

本の上に書かれているのはSPを注ぐという文字のみで、それ以外は何も書かれていない。試しにSPを注いでみると……


〘SP:100が魂樹ソウルツリーへと注がれました〙

魂樹ソウルツリーが芽吹きました〙

〘スキル:【毒攻撃】を獲得しました〙

〘スキル:【毒耐性】を獲得しました〙

〘スキル:【毒生成】を獲得しました〙

〘スキル:【毒吸収】を獲得しました〙


「──」


 思わず、声が漏れる。そのぐらい、想定外の事だったのだ。立体的な種からは少し根が出て葉が現れる。未だ子葉すら完成してないとはいえ、それはれっきとした植物だった。

 俺と同程度の大きさの種、隅の方に1/1000良く分からない単位が書かれているが、これはSPが注がれた量なのかどうかは全く想像がつかなかった。


 ”たった”100SPで4つものスキルが取得できた。その想定外過ぎる結果に呆気に取られた物の、次の問題である2つの魔法陣に目線を向ける。

 王道だと片方が次層、片方が入り口への帰還魔法陣になっている筈だが……俺のラノベ知識では魔法陣によって作られた迷宮に、外から割り込む事は出来ない筈だった。


 戻るか、それとも2つの魔法陣の内のどちらかに乗るか。

ボスだったネズミを倒したからか、自動で閉まった扉はいつの間にか空いていた。


 帰ることは……帰る?いや、俺に帰る場所は無い。

ならば……、




今まで通り、右の魔法陣に乗った俺は光りに包まれ……



迷宮から姿を消し去った。

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