第8話

大きなネズミ、と言っても骨で潰れたネズミを大きくしただけにしか見えない真っ白いネズミは大声を上げて前歯を紫色に光らせると、大きく口を開けて真っ直ぐに俺へと突進してきた。


「tyyyyyyyy」

「──……」


 大きく口を開けたせいで前が上手く見えなかったのか、俺が余裕を持って躱しても気づかずに何処かへと突っ込んでいったネズミに何とも言えない気分になりながらも、首元に牙をたてる。


「──!?」


 あの時の大きなコウモリ同様、あまり突き刺さらなかった事に驚きながらも、今回の場合は少し抵抗があっただけで頑張れば根本深くまで食い込ませる事が出来たので、暴れるネズミに少し苦戦しながらも……最終的にそれだけで倒す事が出来た。


「……」


 いかにもなボス部屋に、ボスに相応しくないネズミが出てきた事に疑問を覚えながらも、光の粒子となって消えていくネズミを見て『ゲームみたいだなぁ』と場違いな事を考えていると、宝箱と2つの魔法陣が現れた。


「……」


 宝箱、ボスを討伐したら出るのは当たり前の事な気もするが、それはゲームでの話だ。ここは……いや、そんな事を考えても何も変わらないのだし、考えるのは止めておこう。2つの魔法陣は定石通りならば帰還と次の層の魔法陣なのだろうが……どちらがどっちか分からない。

 まずは宝箱を開けるか。


「──!?」


 どう考えてもコウモリの為の宝箱とは思えない構造をした、至って普通の見た目の宝箱を開けるのに苦戦する事数分、ようやく開ける事に成功した。身体構造的な問題か、宝箱を開ける事に想像以上に苦戦した事に溜め息を吐きながら、中に入っていた物を見て再び溜め息を吐く。


 中に入っていた、紙というか巻物。

相変わらず紐で纏められている巻物を開けるのに苦戦しながらも、数分かけることでようやく広げる事が出来……、


〘【毒牙】を獲得しました〙


 日本語で書かれた【毒牙】の書という文字に、脳内で再生された音声、そして


魂樹ソウルツリーが開放されました〙


 よく分からなかった魂樹が開放された。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る